奈良のすみれ
 奈良県もずいぶん探して、やっと「大和植物志」という資料を見つけ出しました。「植物誌」ではないようです。著者として記載されている岡本勇治氏は、学歴身分が不十分であるために不当な扱いをされた旨が説明されており、元来、奈良県の植物を探求すれば、岡本氏の文献を当たる必要があるところを、引用文献としても説明されることさえなかったと補足されています。加えて、37歳で早世されたことを悔やむ北川尚史氏の文章が物語を感じさせます。
 60年後に復刻したという説明があったと記憶していますので、元の文献は1930年代のものということになります。旧かな使いが多いこと、学名が古いことは当然として受け入れる必要がありましょう。コシロバナスミレは、学名からスミレの高山型変種と捉えられますが情報がありません。
 楽しそうな情報をよく見かけるエリアですので、早い時期に散策に出掛けたいと思っていますが、なかなかタイミングが合いません。
(2009/10/18)

 奈良県香芝市は1985年に〔すみれ〕を市の花に制定しました。制定の経緯が余り明確ではないのですが、市内のマンホールの金属製の蓋にすみれのデザインが描かれていたりしますので、それなりに親しまれている様子でした。
(2022/08/03)


種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ A) B)
アケボノスミレ B)
アリアケスミレ B)
エイザンスミレ A) B)
コスミレ A) B)
コミヤマスミレ A) B)
アカコミヤマスミレ A)
サクラスミレ B)
シコクスミレ B)
シハイスミレ A) B)
マキノスミレ B)
シロスミレホソバシロスミレ A) B) (A:Viola primulifolia L. var. glabra Nakaiと記載)
スミレ A) B) (A:コシロバナスミレと記載)
ホコバスミレ B)
トウカイスミレ B)
ナガバノスミレサイシン B)
ナンザンスミレヒゴスミレ A) B)
ノジスミレ A) B) (A:ノヂスミレと記載)
ヒメスミレ A) B)
ヒミヤマメスミレ A) B)
フジスミレヒナスミレ B)
フモトスミレ B)
マルバスミレ A) B) (A:ケマルバスミレと記載)
ミヤマスミレ A)
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A) B) (A:アフヒスミレと記載)
オオタチツボスミレ B) 過去に記録はあるが、現状不明
キバナノコマノツメ B)
タチツボスミレ A) B)
タチツボスミレ(山陰型) B) (ニホンカイタチツボスミレと記載)
ケイリュウタチツボスミレ B)
ナガバノタチツボスミレ A) B)
ニオイタチツボスミレ A) B) (A:ニホヒタチツボスミレと記載)
ニョイスミレ A) B) (A:ツボスミレと記載)
アギスミレ A) B) (A:Viola semilunaris W.Beckと記載)
ヒメアギスミレ A) B) (A:Viola verecunds vsr. typica Makinoと記載)
種(自然交雑) 参考資料 補足
アスマスミレ B) アカネスミレ x スミレ
アルガスミレ B) サクラスミレ x スミレ
オオミヤスミレ B) ノジスミレ x スミレ
オクタマスミレ B) エイザンスミレ x ヒナスミレ
キクバサクラスミレ B) サクラスミレ x ヒゴスミレ
コマガタケスミレ B) スミレ x フモトスミレ
スズキスミレ B) スミレ x ヒゴスミレ
タナオスミレ B) ヒゴスミレ x フモトスミレ
ハリマスミレ B) アリアケスミレ x スミレ
ヒラツカスミレ B) ヒゴスミレ x エイザンスミレ
ヘイリンジスミレ B) ヒメスミレ x スミレ
ホソバキリガミネスミレ B) スミレ x ホソバシロスミレ
ワカミヤスミレ B) マルバスミレ x エイザンスミレ
種(自然交雑 無名) 参考資料 補足

変種や品種については主要なもののみを選びました。

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 大和植物志(覆刻版) 岡本勇治(北川尚史) 川端一弘 1997年10月11日
B) 近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-(増補改定) 牧 嘉裕・山本 義則 スミレ愛好会 2016年3月1日

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 奈良市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/10/18) Latest Update 2023/08/22 [75KB]

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