静岡のすみれ
 日本全国に「〇〇県のすみれ」という書籍があったら嬉しいなと思っていますが、実際、そううまくはいかないものですね。運良く、網羅的な情報が記載された資料が見つかりました。静岡県自然環境調査委員会植物部会が編纂した静岡県野生生物目録(植物)という資料です。静岡県版レッドデータブックを制作する際に、野生生物保護を進めるための基礎資料とするために作成したと記載されています。
 エゾアオイスミレをケマルバスミレと記載しており、情報が古典的な感じがします(笑)。ウスゲアカネスミレ、ハダカシロスミレ、ワカシュウスミレになると、そこまで分類しなくても良さそうなものとマニアックな調査員の存在を感じてしまいました。ここでは紹介にとどめますが、記載されていた交雑種はスルガキクバスミレ、アズマスミレ、マルバタチツボスミレ、ミツモリスミレ、フギレミヤマスミレでした。ここまでは想定の範疇でしたが、ビロードスミレ、サンロクタチツボ、コウズスミレって何でしょう。学名が付されていて、それぞれ、ビロードスミレはViola mandshurica W. Becker f. villosa Sugimoto、サンロクタチツボはViola obtusa (Makino) Makino f. alba Sugimoto、コウズスミレはViola pumilio W. Becker var. obtusa Nakaiとあり、コウズスミレはフモトスミレの変種扱いのようです。
 このサイトでは、一般の文献に登場するような和名は、百科事典的に大筋で網羅しています。多少、尺度に幅があるのを否定するものではありませんが、個人の事業ではないとすれば、調査するに際して都道府県に共通する何らかの基準があって然るべきかも知れませんね。
2009/01/22

種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ A) ウスゲアカネスミレ
オカスミレ A)
アケボノスミレ A)
アリアケスミレ A)
エイザンスミレ A)
ウスバスミレ A)
コスミレ A)
ゲンジスミレ A)
コミヤマスミレ A)
サクラスミレ A)
シコクスミレ A)
シハイスミレ A)
フイリシハイスミレ A)
マキノスミレ A)
シロスミレ A) (ハダカシロスミレと記載)
スミレ A) ワカシュウスミレ
アツバスミレ A) ケアツバスミレ
ホコバスミレ A)
ナガバノスミレサイシン A)
ナンザンスミレヒゴスミレ A)
ノジスミレ A)
ヒカゲスミレ A)
ヒメスミレ A) ケヒメスミレ
ヒメスミレサイシン A)
ヒメミヤマスミレ A)
フジスミレ A)
ヒナスミレ A)
フモトスミレ A)
フイリフモトスミレ
マルバスミレ A) ケマルバスミレ
ミヤマスミレ A)
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A)
エゾアオイスミレ A) (ケマルバスミレと記載)
エゾノタチツボスミレ A)
キスミレ A)
キバナノコマノツメ A)
アカイシキバナノコマノツメ A)
タチツボスミレ A) ケタチツボスミレ
ケイリュウタチツボスミレ A)
コタチツボスミレ A)
シチトウスミレ A)
シロバナタチツボスミレ A)
ミドリタチツボスミレ
ナガハシスミレ A)
ナガバノタチツボスミレ A) ケナガバタチツボスミレ
ニオイタチツボスミレ A) ケナシニオイタチツボスミレ
シロバナニオイタチツボスミレ A)
ニョイスミレ A) (ツボスミレと記載)
アギスミレ A)
種(自然交雑) 参考資料 補足
オクタマスミレ エイザンスミレ x ヒナスミレ

書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました 〇=自生確認

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 静岡県野生生物目録(植物) 静岡県自然環境調査委員会植物部会編 静岡県 平成16年度

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 静岡市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/01/22) Latest Update 2024/04/14 [90KB]

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