京都のすみれ
 やっと京都の資料を見つけ出しました。「京都府草木誌」、発行は宗教法人とあります。他府県の植物誌とほぼ同じ体裁をしており、草木誌という題名にした理由は何だろうと考えてしまいました。藻類や苔類等には及んでいないということかもしれませんが、雅なイメージを持つ題名ですね。
「滋賀県植物誌」では、近畿では伊吹山にだけ見られるとされたアケボノスミレが登場します。京都も近畿圏だったはずと、つい確認してしまいました。また、どうしても全体に学名の表現が古い傾向があるようです。
 さて、この文献にはナンザンスミレ( Viola chaerophylloide )とフジスミレ( V. nikkoensis )が登場します。ヒゴスミレとヒナスミレの誤認、または逸出品である可能性もあり、現物を見ていないので扱いに困っています。ナンザンスミレについては京都府のwebサイトにある京都府自然環境目録(離弁花類)でも見られます。フジスミレの方は記載しないでおきます。最後に、オニスミレ( V. tomentosa )という名前が登場しますが、全く情報がありませんので、これも記載を躊躇しています。
(2009/10/12)


 前述している京都府のwebサイトにある京都府自然環境目録(離弁花類)から改めて情報を取り込みました。書籍としても出版しており、レッドデータブックとも情報共有している様子です。
 それなりに信頼して見ていますが、イソスミレが2度登場して、一方にだけ「京都府準絶滅危惧種」と付記されているところが少し疑問です。その「京都府準絶滅危惧種」ですが、アケボノスミレは分かりましたが、アカネスミレ、エイザンスミレ、ノジスミレあたりになると、自分の目で確認してみたくなります。特に、エイザンスミレは比叡山が命名の由来ではなかったでしょうか。
(2011/01/07)

 スミレ愛好会の『近畿地方のスミレ類』を入手して、時代も異なり、種の数が大幅に種が増えた感があります。
(2017/02/02)


種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ A) B) C) 京都府準絶滅危惧種
オカスミレ A) B) 無毛品種
アケボノスミレ A) B) C) 京都府準絶滅危惧種
アリアケスミレ C)
エイザンスミレ A) B) C) 京都府準絶滅危惧種
ゲンジスミレ A)
コスミレ A) B) C)
コミヤマスミレ C)
サクラスミレ A) B)
シハイスミレ A) B) C)
マキノスミレ A) C) (A:ホソバスミレと記載)
シロスミレ A) B) (A:シロバナスミレと記載)
スミレ A) B) C) ケナシスミレ
アツバスミレ A) 海岸性植物、疑問あり
アナマスミレ B) C) 海岸性植物
ホコバスミレ C)
スミレサイシン A) B) C)
ナガバノスミレサイシン A) B) C)
ナンザンスミレ A) B) 疑問あり
ヒゴスミレ B) C)
ノジスミレ A) B) C) 京都府準絶滅危惧種
ヒカゲスミレ A)
ヒメスミレ A) B) C)
ヒメミヤマスミレ A)
フジスミレヒナスミレ A) B) C)
フモトスミレ A) B) C)
マルバスミレ A) B) C) ケマルバスミレ
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A) B) C)
イソスミレ B) C) 京都府準絶滅危惧種
オオタチツボスミレ A) B) C) ケオオタチツボスミレ
オオバキスミレ B) C) 京都府準絶滅危惧種
ミヤマキスミレ C)
タチツボスミレ A) B) C) ウラベニタチツボスミレ
タチツボスミレ(山陰型) C) (C:ニホンカイタチツボスミレと記載)
オトメスミレ A)
ケイリュウタチツボスミレ C)
コタチツボスミレ A) B)
シロバナタチツボスミレ A) 白花変種
ツルタチツボスミレ C) 絶滅寸前種(京都府レッドデータブック)
ナガハシスミレ A) B)
ナガバノタチツボスミレ A) B) C) ケナガバタチツボスミレ
ニオイタチツボスミレ A) B) C)
ニョイスミレ A) B) C) (A:ツボスミレと記載)
アギスミレ A) B) C)
ハイツボスミレ A)
ヒメアギスミレ C)
種(自然交雑) 参考資料 補足
アソキクバスミレ C) アカネスミレ x ヒゴスミレ
アリアケヒメスミレ C) アリアケスミレ x ヒメスミレ
イワフネタチツボスミレ C) オオタチツボスミレ x ナガハシスミレ
エチゴタチツボスミレ C) タチツボスミレ x イソスミレ
カツラギスミレ C) ヒゴスミレ x シハイスミレ
スズキスミレ C) スミレ x ヒゴスミレ
ヘイリンジスミレ C) ヒメスミレ x スミレ
ムラカミタチツボスミレ C) オオタチツボスミレ x タチツボスミレ
種(自然交雑 無名) 参考資料 補足

書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました 〇=自生確認

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 京都府草木誌 竹内 敬、花明山植物園 宗教法人大本 1962年8月7日
B) 京都府自然環境目録 京都府 京都府 2002年4月
C) 近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-(増補改定) 牧 嘉裕・山本 義則 スミレ愛好会 2016年3月1日

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 京都市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


(つぶやきの棚)徒然草

 (2009/10/12) Latest Update 2024/04/14 [85KB]

ページのトップへ戻る