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すみれを見に行く

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サイドストーリー (つぶやきの棚 こぼれ話) 2013/02/19
 小ぢんまりとした住宅街、庭というよりは隙間と呼ぶのが相応しいような空間。そこに棚を立体的に組んで、小さな鉢を並べて、散水や害虫駆除などに励んでいると、当然のように、ご近所さんが通りかかります。
 「世話がたいへんでも、楽しいんでしょ!」
 明るく微笑みながら、声をかけていただくのです。もちろん、楽しいと言えば楽しいのですが、盆栽や菊花を嗜むご年配の先生方とは趣きが異なり、継続観察をするために育てているのですから、作業に近い性質でもあります。しかしながら、逐一、それを説明する訳にもいかず、お天気がいいですねぇ!などとご挨拶をして、曖昧に流しているような始末です。
 どうも春になると浮かれたように家を開けて、どうやら、すみれを見るために日本中を旅しているらしい…。全くけしからん(笑)。周囲の方々に理解されるということは、存外、難しいことなのかも知れません。
 ところが、同じ雰囲気を醸し出すというのか、かっこよく言えば、感性が似ているらしいと想像できる人物を見つけることはできそうです。
 この「橋を見に行こう」の著者である平野暉雄氏も、その一人。資料によりますと、立命館大学理工学部土木工学科卒業された、つまり、橋を作る方の専門家でおられた様子。この一冊だけで、全国47都道府県の150橋を一挙紹介しているそうです。
 橋というものが「美しい建造物である」と、少しは思っていました。でも、これほどに鑑賞の対象たりうるとは思っていませんでした。一気に目を通したものです。美しく撮るだけでなく、その橋の構造的特徴を理解して撮影ポイントを設定しておられるのだろうなと感じさせます。
 おそらく、平野氏はめぼしい橋の情報が得られると、自分の目で見るためにそそくさと出掛けるのだろうなぁと、勝手に想像しています。
 もう一人、「蛍を見に行く」の宮嶋康彦氏も同じ匂いがします(笑)。やはり、鹿児島から青森まで足を運んでいらっしゃるのですが、撮影の対象が「蛍」であるだけに、敢えて、澄んだ清流が流れる自然豊かな地を夜に歩き回ろうというのです。昼間の内に撮影地の目星をつけていると想像しますが、できるだけ街路灯や車の前照灯を避けて深夜に撮影をすることも多く、一晩中、撮影しているとの記述も見られます。土地勘のない場所でたいへんでしょうね。
 この本は読み物、旅行記や歳時記としてもおもしろいのではないでしょうか。モチーフである蛍を見つめるような目で、周囲の環境や触れ合った人々も客観的に眺めているのかも知れませんね。
 鹿児島へ車で移動する話から始まって、青森の下北半島で「遠くまで来たな、と振り返る」、「家を出てから、ちょうとふた月が過ぎていた」と結んでいます。

 あゝ、状況が許すなら、いや、許さなくても、こんな旅がしてみたいものですね。桜を追いかけている方もいます。情報が出てこないので、そのお話はまた別の機会に。
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