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ふる里のすみれを追った書籍たち

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サイドストーリー (つぶやきの棚 こぼれ話) 2003/04/24
 あちこち探しまわり、最近、『九重のスミレ(1972)』という書籍を手に入れました。最近の出来事として、とても嬉しい事件の範疇に入ります。
 先日、千葉県のとある山中で自然観察指導員をされている方と知り合いになりました。主に野鳥観察をするために野山を歩いているのだそうですが、すみれたちについても造詣が深く、話が合いそうなので、知り合ったばかりなのに「『千葉県のスミレ』という本を作るなんてどうでしょうか!」などと訴えていました。たいへん失礼しました。
書籍『九重のスミレ』  『九重のスミレ』は大分の医師である佐藤利明氏と、やはり、大分の高等学校教諭である久本幸義氏の共著ということになっています。お二人の先生の詳細なプロファイルや編集上の担当分野まで承知していませんが、久本先生が植物画を担当されたようです。
 国立国会図書館をはじめ、あちこちの図書館や古書店で探しましたが、なかなか見つからず、半ば諦めていました。おそらく、少部数で出版されたものではないかと思われ、個人出版との情報もありました。
 やっと入手して、早速、冒頭の佐藤利明氏の言葉を読んでみました。すると「一応ささやかな冊子にまとめて出版してみようと思いついた」、「スミレ観察の一里塚として表現してみたかった」とあります。やはり、個人出版だったものと推察できます。出版社名のたぐいは登場しません。それにしても、ささやかな冊子と説明するには外箱付きの立派な装丁であり、A4版81頁に及ぶ豪華本です。
 内容としては、井波一雄氏WHO!の『日本すみれ図譜(1966)』や浜栄助氏WHO!の『原色日本のスミレ(1975)』に近いものです。因みに、出版時期も同時期と言えます。少し異なっているのは、『九重のスミレ』の場合、カラー写真も多用されている点です。また、地域の土壌や気候に関しても、巻末に詳細なデータが記載されており、編集上のこだわりが感じられます。
 岩手日報社から出版された片山千賀志氏著の『岩手のスミレ(1993)』、比較的新しいところでは、松下和江氏が編集した小冊子である『根室地方スミレハンドブック(2003)』、今井建樹氏、伊東昭介氏共著による『信州のスミレ(2004)』などがあります。
書籍『青森のスミレ』 書籍『青森のスミレ』  青森県弘前市在住の虻川輝夫氏が「友人に配布する目的で」作ったという個人出版の書籍『青森県のスミレ(2011)』です。
 県内に自生するすみれについては、一部の品種を除いて網羅しています。網羅性もさることながら、地元の山野を歩いた足音が聞こえてくるような言葉が楽しくなります。
 各ページの逸話がそれぞれに楽しく、かつ興味深くて、図鑑的な書籍でありながら、読み物としてもおもしろいと思いました。「道端の売店でスミレを鉢植えにして売っていた」という下りに、そんなこともあるのか!と思いながら、高尾山でも自然公園でありながら、そのような光景が見られたことを思い出しました。
小冊子『みのかものスミレ』  美濃加茂市教育委員会が美濃加茂自然史研究会の協力を得て発行したとされる『みのかものスミレ(2002)』という小冊子もあります。
 教育委員会に連絡をして、この小冊子を取り寄せました。美濃加茂市にはシハイスミレとマキノスミレの両方が自生していて、どちらか区別できないものも多いとあります。ある意味で、関東近辺の事情と似ているのかも知れませんね。
 この小冊子は「スミレはスミレ展」-みのかものスミレ展というイベントのために制作されたものと思われます。制作の経緯はそれぞれですが、地元のすみれたちを専門に紹介する資料があることが嬉しくなりますね。
書名 著者・編者 出版社 発刊時期
福井のスミレ(仮称) 白崎重雄 (不詳) 2016(予定)
青森のスミレ 虻川輝夫 (個人出版) 2011/08/10
信州のスミレ 今井建樹、伊東昭介 ほおずき書籍 2004/04/21
根室地方スミレ ハンドブック 松下(宮野)和江 ニムオロ自然研究会 2003/02/01
みのかものすみれ 美濃加茂市教育委員会 美濃加茂市教育委員会 2002/04
岩手のスミレ 片山千賀志 岩手日報社 1993/04/10
ザ・高尾IV すみれの詩 新井二郎 のんぶる舎 1989/03/20
自然観察シリーズ1 スミレの観察 都高尾自然科学博物館 都高尾自然科学博物館 1977/03/25
九重のすみれ 佐藤利明、久本幸義 (個人出版) 1972/10
 すみれは日本各地に咲いて、そこで遊んだ子どもたちの目に留まって記憶に残る「ふる里の野草」です。地方に拠って示指する種が異なり、また同じ種でも少しずつ様子が違うので、各地で資料が作られるとありがたいと思っています。先ず、地元である千葉県でも発行されて欲しいところですが、自分で制作するしかないのでしょうか。
サイドストーリー
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