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Jupiter Moon Io

美しい瞳を持つ、星になった娘イオの話
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サイドストーリー (つぶやきの棚 こぼれ話) 2004/01/08
 今回は「星のお話」…?いえいえ、やはり、ギリシャ神話にまつわる「すみれのお話」です。
 アメリカの探査機「パイオニア」や「ボイジャー」が、太陽系の惑星たちを巡って星々の情報を送り続けました。巨大な外惑星である木星には(現在知られている限り)63個の衛生が存在します。こうした衛生たちは肉眼で確認することができません。実は見えても良さそうな明るさの衛星もあるのですが、木星の明るさの影響で見えないのだそうです。17世紀、小さい望遠鏡を使えば観察できる4個の衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)が発見されました。発見者はガリレオ・ガリレイ。4個の衛星がガリレオ衛星と呼ばれる所以です。

Jupiter Moon Io  木星の第一衛星イオ(Jupiter I "Io")の姿を撮影したのは、1995年に木星に到着したアメリカの木星探査機「ガリレオ」でした。イオや海王星の第一衛星トリトンでは火山活動が確認されているそうです。

 イオは地球の衛星ルーナ(つまり、月)とほぼ同等の大きさで、木星の衛星の中で内側から5番目の軌道を回っています。その名前はギリシャ神話に登場する美しいニンフ(妖精)イーオーに由来しているとされます。

 ← Jupiter I "Io" by NASA * (NASAウェブサイトより)
コレッジョ:イーオーとゼウス  ギリシア神話の主神ゼウスはローマ神話のユーピテル、即ち、ジュピターです。神々と人間を支配する支配神、全宇宙の秩序たる天空神ですね。木星(ジュピター)は、そのゼウスを象徴する巨大惑星という訳です。
 ところが、この主神ゼウスはギリシア神話で悠々たる姿ばかりが描かれている訳ではなく、美しい娘を見かけるとフラフラとちょっかいを出す逸話が多く、「なんだかなぁ~」という気持ちにさせられます(笑)。そうしたゼウスの恋人たちの中で少し有名になった河の神イーナコスの娘がイーオー(諸説あり)。イオと表現することが多いようですね。

 ウィーン美術史美術館に収蔵されているコレッジョの油彩画では、イオとゼウスの逢瀬が少しエロティックに描かれています。恋人と言っても、相手が全能神ゼウスでは「そっとお断り」することができたかどうか…。時代劇を見る限りの話ですが、日本の江戸時代に将軍様から「名はなんと申すか?」と問われたら、大奥に上がる以外の選択肢は一般には無かったことでしょう。一方、親が決めた相手と結婚することが当たり前であった武家の娘にとって、それは光栄以外の何ものでもなかったことなのでしょうか?残念ながら、イオの気持ちが描かれている逸話は見当たりません。宗教的観念を含めて、神話の世界の住人であるイオの心を、現代に生きる私たちが推し量ることは難しいのかも知れません。

 ゼウスの恋の逸話には后ヘーラー(ヘラ)がほぼ必ず登場します。イオはヘラの女神官であったという説もあり、ヘラにはゼウスの行動パターンはお見通しだったようですね。ゼウスは、イオをヘラの目から隠すために牝牛(仔牛)の姿に変えてしまいますが、それさえ、ヘラにはお見通しで、更にイオの苦難が続くのです。
 全身に目があるアルゴス、それを退治することになるヘルメースの逸話などは省略しますが、虻に追われてギリシャからエジプトまで彷徨ったイオは、その地でやっと元の姿に戻ることができて、その地の王と結婚をするという結末です。一応、ハッピーエンドなのでしょうか。大筋は似ていますが、色々なパターンがあり、イオは星になったという結末もあります。神話とは、幾つかの土地にある伝承が合成されて様々に分化しているものなのですね。
フィギノ:牝牛の姿にされたイーオー  神話にはいろいろなパターンがあります。イオには許嫁がいたのに、アポロン(ゼウスの息子)が横恋慕をしたので、狩りの女神ディアナがイオをスミレに変えて匿ったという物語もあるのです。ディアナはローマ神話に登場する神様でアポロンの双生児とも言われます。英語読みでダイアナと呼ぶ方が親しみがあるかも知れません。同じ神様がギリシャ神話ではアルテミスと呼ばれます。銀河英雄伝説に「アルテミスの首飾り」という衛星兵器が登場しており、世代によっては、この名前に馴染みがある方が多いでしょうか。

 ゼウスは仔牛の姿になったイオのために食料としてスミレの葉を作ったという話があります。なんとも勝手な考え方のような気がしますが、その後に作る花はイオの瞳の色をしていました。一方で深い愛情が感じられます。

 これまで神話とか花言葉とかについて余り話題にしてきませんでした。パターンが多くて取り留めがない印象だったからです。 そのすみれの花言葉ですが、一般に「小さな愛」、「誠実」、「小さな幸せ」、「控えめ」、「あどけない恋」などが該当するようです。こうした花言葉は神話に由来する場合が多いのですが、イオとゼウスの関係は、意外に、誠実な恋だったのかも知れません。
 この「花の写真館」のドメインである io-net は,勿論、この美しい瞳を持つイオに由来するものです。
 このページで油彩画の複写を掲出していますが、パブリックドメイン(公有)の状態にあるものと認識しており、また、「パブリックドメインにある平面的な作品の忠実な複製はパブリックドメイン」との認識を踏まえ、合法と理解して利用させていただいています。 * (ウィキペディアより)
 NASA所有の静止画について、NASAは通常著作権を主張せずに一定の条件下で利用を許諾しています。この包括的な許諾は個人のウェブページにも適用されるとのことです。 * (NASAウェブサイトより)
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