イソスミレ (磯菫 )[補足説明]
主に本州や北海道の日本海側、日高エリアに自生するイソスミレは幾つかの特異な性質を持っていると思います。
イソスミレ
 この株は、昨年の葉が周囲に残っていますね。緑の葉が展開している内側で直径60cm、昨年の葉が茶色に見えている外側は直径90cmというところでしょう。最盛期にはちょうど1mになりそうな勢いですね。未確認ながら、これは単一の株かも知れません。
石川県 2008年4月3日
イソスミレ イソスミレ

 何度か繰り返して現地を歩くことができました。砂は想定外によく動き、小さな砂山の位置は常に変わります。そうした場所にイソスミレは根付きません。海岸線の地形を形作るような小高くなった丘の上がイソスミレやアナマスミレの定席のようです。その丘は砂だらけではなく、ところどころに固い土も見えているような環境で、風が運んだ砂が覆っているという感じでしょうか。
 それでも、砂の深さによっては、その上に顔を出すことは簡単ではないだろうなぁと思われるケースもあるのです。年単位の時間をかけて大株に育ち、根で土壌をつかむようにして、一斉に芽を出す様子が伺えます。でも、もう一つ気になるのですが、この環境で跳んだタネはどのように乾燥を防ぎ、水分のある深さまで根を下ろすことができるのでしょうか。表面から3cm程度は乾燥しています。成長した株は、すみれの仲間では最も深い位置まで根を下ろすとされています。
 ところで、誤解に繋がりそうな標準和名をもらってしまったようです。「磯」とは、一般に海岸の岩場を指し示します。そのような場所でイソスミレを見たことはありません。このような環境は砂浜と呼ぶのでしょうから、「浜」、ハマスミレという名前の方が妥当ではないかと思いますが、今から変えることは困難でしょう。
2013/08/21

 この自生地の将来を悲観させられた現実を目にしました。これから記載する部分は明確な批判になると思いますので、多少の躊躇もありますが、この記事を目にする方には一考を願いたいという気持ちで記載します。
 不特定多数が目にするインターネット上に、この自生地の具体情報が掲載されています。2004年以前にも存在したのですが、現在、そうした記事が増えているのです。以前に見つけた記事は自然保護団体が運営しているサイトの記事でした。今回、複数の記事を見つけているのですが、やはり、自然保護団体と植物同好団体、それから、県自然保護部門のものです。こんな皮肉はありません。つまり、県の自然保護を目的とする部門が自然観察会を行うための情報として、日付と場所をインターネット上に公開しているということなのです。他県でも同様の事件が起きたことがあると聞きました。その行動は自然保護に繋がるものではないので、税金で行うような行動ではないでしょう。因みに、地方交付金として日本全国民の税金が流れています。つまり、どなたも他人事ではありません。それ以上に目的を逸脱しています。不特定多数を観察会に参加させることが事業目的ではないと思うのですが・・・。参加者は何の注意も受けることなく、その結果をブログでどんどん発表しています。これは目的と逆の行動を促進しているに違いありません。それに気がつかないのはどうしたことでしょうか。
2010/01/31
 2013年にも上記と良く似たサイトが見つかりました。今回も、元来、お手本を示すべき存在が行っているため、「これはセーフなんだ」と摺りこんでしまう可能性があります。何が何でもダメということではなく、必要な方にはきちんと指導を行うべきだと思いますが、完全に不特定多数が簡単に検索できる状態で自生地情報を置きっ放しにしていると表現すれば、最も適切だろうと思われました。
 イソスミレは石川県指定希少野生動植物種(絶滅危惧II類)、環境省カテゴリーでも絶滅危惧II類(VU)に指定されている種です。県自然保護部門が示してしまった悪い手本は、一般人のブログを枝葉として増殖して、地方公共団体や自然保護団体までが「普通のこと」と認識してしまったのかも知れません。地元の方にとっては、子供の頃から普通に見ていた雑草であり、その自生地には余り興味もないということは分かっていましたが、近年は観光資源として有効利用できるという側面も注目されました(これは担当者の説明です)。情報を公開する代わりに確実にと管理をするか、それができないのであれば、そっとしておくか、二者択一だと思います。ここは・・・、おそらく確実な管理はできないと思われました。
2013/08/23

 もう長い期間になりますが、イソスミレが見られる自生地の具体名を掲載してしまっているサイトやブログの管理人さんにコツコツと連絡をして、「なんとか表現を工夫して下さい」というお願いを続けています。しかしながら、真摯に対応してくれるケースは半々というところ。実に残念です。
 今年も、自然保護を全面に打ち出しているサイトが、海岸の具体名を出したままというケースが幾つかありました。残念ながら、やはり成果は半々です。押し付けるべき筋合いでも立場でもないという思いもあって、できるだけ丁寧であることを心がけて連絡しているのですが、無視されることがとても多いですね。また、『県内では禁止されていない』、『この程度の情報では自生地に辿り着くことはできない』とのご連絡をいただいたこともあります。
 禁止されていない・・・、それは常識とか、良心とか、心得の問題ではないでしょうか。地方自治体の公務員が積極的に禁止令を出す頃には、既に絶滅しているかも知れませんよね。辿り着くこと・・・、それは簡単にできます。おそらく、勘違いだったのでしょう。詳しくは書きませんが、なにしろ、一本道ですから。遠方から訪問した旅人でも辿り着けます。
 もう一つ、『イソスミレの数が減った主な原因は、盗掘や踏みつけではない』という論もいただきました。土木工事などの影響による砂浜後退の例、その他を意味しているものでした。それはそれで理屈ですが、それは過去のことだと思うのです。既に、現状まで自生環境が失われて個体数が減ったのですから、これまでのままで良いと考える方が不自然ではないでしょうか。今のように情報が垂れ流されていては、観光客がとどめを刺してしまいかねません。記事の表現を工夫していただいたサイトの担当者は、観光を主体に考えていたと反省の弁を述べておられました。
 いつも悩んでしまうのですが、このようなサイトを自分自身が運営していて、自生地を訪ねることを推奨しているようなものです。実際、観察することは大事だと思っています。でも、絶滅危惧種に限らず、自生地の表現については、それなりの配慮をしているつもりであり、その気持ちが今の活動を後押ししているのではないでしょうか。ただ、コツコツと連絡を続けていることは決して楽しくありません。むしろ、嫌な気持ちになることの方がずっと多いのです。今回、指導的立場にいる方の認識だけに残念な気持ちになってしまいました。理解していただけず、訂正していただけず、現在も自生地の名前がインターネット上に露出され続けています。泣けてきそうですが、これからもコツコツと連絡を続けるしかない・・・かなぁ。
2013/11/03

 (2013/08/21) Latest Update 2021/05/08 [245KB]

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