オオイヌノフグリ (大犬の陰嚢、オオバコ科)--- Veronica persica Poiret ---

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科)
 早春、道端でも野山でも、数え切れないほどの瑠璃色の花を咲かせるオオイヌノフグリです。あれだけの数でありながら、この花々は一日花なので、毎日別の花が咲いているのだという訳ですから、更に驚いてしまいます。
 在来の近縁種であるイヌノフグリに似ていて、それよりは大型ということらしいのですが、そのイヌノフグリを見たことがありません。幾つかの情報によれば、繁殖力の強い外来種であるオオイヌノフグリの進出によって駆逐されてしまったようです。余り、笑える話ではありませんね。
 余りにも数が多く、どこでも見られるという意味で、完璧な雑草ですから、余り強い関心を持って観察することはないかも知れませんね。こうしてアップにしてみると、そのコバルトブルーと呼ぶべき合弁花は端正で美しい姿をしています。
 (注)ゴマノハグサ科は大きく変動している科です。オオイヌノフグリはゴマノハグサ科とされていたのですが、現在はDNAの分析により、オオバコ科とするのが適当とされました。
撮影 : 千葉県佐倉市 2013年3月16日

オオバコ科 クワガタソウ属
分類体系 APG 属性(生活型) 越年草、帰化植物
標準和名 オオイヌノフグリ 漢字表記 大犬の陰嚢
学名/栽培品種名 Veronica persica Poiret RDB
花期 早春:2~4月 結実期
原産地 欧州、西アジア 備考
国内分布 帰化植物として、ほぼ全国に広く繁殖している。アメリカ大陸、オセアニアなどにも広く帰化している。
自生環境 路傍、荒地、農地などに群生する。
補 足 別名:瑠璃唐草、天人唐草。和名は近縁種であるイヌノフグリの大型種を意味している。

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科) オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科)
オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科)
花の下にあるものが、その「フグリ(陰嚢)」、つまり、果実だと思います。
千葉県佐倉市 2013年3月16日

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科) オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、オオバコ科)
千葉県八街市 2016年3月29日

春一番に瑠璃色(コバルトブルー)の花を咲かせる帰化植物です。この植物が明治の初期に渡来後、日本中を席巻して、在来種であるイヌノフグリ(V. didyma var. lilacina)はほとんど見られなくなりました。果実の形が犬の睾丸に似ているところから命名されたのですが、別の名前を検討しなかったのでしょうか。属名のベロニカはキリスト教の聖女ベロニカに由来するのだとか…。欧米では、美しい花を愛でて"bird Eye"または"Cat's Eye"と呼ぶのだそうです。
『いぬふぐり 星のまたたく如くなり』

 高浜虚子の句に登場する植物は、オオイヌノフグリの方だそうです。因みに、漢字では「大犬の陰嚢」。別名は「瑠璃唐草」、「天人唐草」、「星の瞳」…、こちらの方が印象は良さそうですね。
イヌノフグリを在来種と表現していますが、かなり古い時代に帰化した外来種という説が一般的です。どの時代に渡来したら帰化種かという境界線の問題で、相当古い時代だと、まぁ、在来種と表現してもバチは当たらないかなぁと(笑)。
 さて、このオオイヌノフグリとイヌノフグリの関係ですが、前者の花粉が後者の雌しべに付着すると、正常な種子生産を妨げる作用「繁殖干渉」が起こる(Takakura K., 2013)との報告があります。攻撃性を持つ前者は爆発的に勢力範囲を拡げており、小さくて肩身の狭い後者は環境省の絶滅危惧Ⅱ類(レッドリスト2018)という関係にあるようです。

(つぶやきの棚)徒然草


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