園芸品種(栽培品種)名の表現 |
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園芸品種とは園芸的に優れた形質を持つ系統の保護を目的に作られ、種の分類項目の一つとみなされますが、独立した概念です。 表記としては"cultivar(cultivated variety)"を付す方法が用いられていました(一般に"cv."と略す)。 尚、複数形である"cvs."が使用される例は稀有であり、一語で複数の園芸品種を指し示す必要がある場合に限られます。 |
従前は右のように表記されていました。 Viola odorata cv. 'Sulphurea' → Viola odorata 'Sulphurea' 1995年の国際栽培植物命名規約(ICNCP)では、学名欄の通り"cv."を記載しないことになり、旧表記法は廃止されました。 (2021年現在、国際栽培植物命名規約の最新版は第9版の2016年版 [ISBN 978-94-6261-116-0] です) |
園芸品種(栽培品種)を単に「品種」と呼ぶ例が散見されますが、分類項目の品種("f.")とは異質な概念なので、意識的に区別すべきでしょう。尚、栽培品種名は、正確を期すれば「学名」ではないのですが、便宜上、同様に扱われる例が多く、当サイトも同様です。 |
資料では、欧州に広く分布するニオイスミレ("Viora odorata")と、主に北米等に分布する("Viora sororia 'papilionacea' ")の交雑種として説明されています。これが正しいとすれば、Viola odorata 'Governor Herrick'という表現が多いことは、とても不思議ですね。
一方、別の資料では("Viora cucullata")由来の交雑種として説明されています。もう一方の親は、やはり("Viora sororia")とされているようでした。
英国から取り寄せた Roy E. Coombs 氏の"Violets"という書籍で調べてみることにしました。この書籍によると、'Governor Herrick'は20世紀初頭(または19世紀末)に米国で登場したそうですが、その後に登場した(良く似た)'Bournemouth Gem'や'Bournemouth Blue'等は、この'Governor Herrick'から芳香などの要素で選別された栽培品種であると記載されています。ただ、それらが栽培され、流通していく過程でラベルミス等による多くの混乱が生じていったことは大きな問題であり、かつ、どれも識別が難しい程に似ていて、いつか 'Governor Herrick Type' として総称されていくことになったとされています。 cf: --- "Violets: The History & Cultivation of Scented Violets"2008/07/15
(2008/07/13) Latest Update 2024/08/06 [385KB]