アツバイチキスミレは、名称から、リュウキュウシロスミレとスミレの変種であるアツバスミレの組み合わせということでしょう。展示会で撮影させていただいた写真の個体は人工交配である可能性もありますが、イチキスミレはアツバスミレも自生する鹿児島や熊本で見られる自然交雑種ですから、変種が片親となる組み合わせが野山でも見られる可能性があります。因みに、鹿児島でアツバスミレを観察したのは、合併して間もない「いちき串木野市」でした。近隣でリュウキュウシロスミレの自生も知られています。2010/09/01
浜栄助氏の「写真集 日本のすみれ(出典:S002) 」によりますと、鹿児島で駒田暢男氏が見出したものは、現地のリュウキュウシロスミレが淡い紅紫色をしており、紫色のスミレとの組み合わせによって「きれいな紫色をしている」と記載されています。その写真を拝見しますと、確かにきりっとした濃い紫色でした。2006年に展示会で撮影させていただいたものとは印象が違うものです。花弁が細くて、しっかり開かない旨が記載されていますが、個体差ではないかと思います。興味深い情報として、「ある程度、結実性がある」とされています。不完全稔性を示すということでしょう。同じページの熊本県で撮影された写真にはたくさんの株が花を咲かせている様子が写っています。2010/12/18
リュウキュウシロスミレが兄弟分のアリアケスミレに置き換わるとハリマスミレと呼ばれることになります。こうした雑種の名前というものは組み合わせ名ということになるのでしょう。2010/12/21
因みに『すみれを楽しむ(田淵誠也)』によると、「1975年に鈴木進氏が交配して育成した当初はアツバハリマスミレと呼ばれた」とあります。こういうこともあるのでしょうね。
当該書籍は二次資料に類する性質ですが、「その後鹿児島県市来町で見いだされこの名になった」とする記述があるので補足します。2017/02/17
東京都 2016年3月31日 植栽 (俗称「アツバイチキスミレ」)
(2010/09/01) Latest Update 2024/08/06 [425KB]