ジロボウエンゴサク
(次郎坊延胡策、ケマンソウ科→ケシ科)---
Corydalis decumbens
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以前はケシ科に分類されていたエンゴサクです。一般に淡い紅色の花を咲かせます。分布は関東より西で九州までの温暖な地域に自生します。漢字では「延胡索」という見慣れない文字列ですが、生薬の一種を指し示す言葉です。鎮痙、鎮痛作用などがあって、安中散、牛膝散などの漢方剤に配合される中国の植物(近縁種)に由来します。基本的に有毒植物ですので留意が必要です。
実は、花の構造をよく調べますと、すみれの仲間に良く似ていることが分かりました。果実が蒴果で、種子に種沈(エライオソーム)が付着する性質まで良く似ています。
撮影 : 千葉県千葉市 2008年4月22日
過去、独立したケシ目ケマンソウ科( Fumariaceae )とされていたが、変遷を経て、APGⅢでケシ目ケシ科の亜科の一つケマンソウ亜科とされた。
例)エゾエンゴサク:ケシ科(ケマンソウ亜科)キケマン属( Corydalis )、コマクサ:ケシ科(ケマンソウ亜科)コマクサ属( Dicentra )
科 |
ケシ科 |
属 |
キケマン属 |
分類体系 |
APG |
属性(生活型) |
多年草 |
標準和名 |
ジロボウエンゴサク |
漢字表記 |
次郎坊延胡索 |
学名/栽培品種名 |
Corydalis decumbens (Thunb.) Pers. |
RDB |
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花期 |
春:4~5月 |
結実期 |
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原産地 |
日本 |
備考 |
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国内分布 |
関東から九州地方に分布する。 |
自生環境 |
低山の湿った林床、林縁部に自生する。 |
補 足 |
早春に花をつけて、結実すると地上部が消えてしまうスプリングエフェメラルの一種。よく似た近縁種とは苞葉の形状(シンプルで丸い)で区別することができる。 |
花は長さが2cm程の細長い姿で、薄紅色の花が一般的だと言われる
よく似た近縁種との区別方法として、花茎の付け根にある「苞葉」がシンプルで丸めである点が挙げられる
千葉県千葉市 2005年4月9日
湿り気のある林縁に多いが、スミレなどと一緒に明るい斜面にも自生していた
千葉県千葉市 2008年4月22日
エンゴサクは「延胡索」を和風に読んだもの。ではジロボウは?漢字では「次郎坊」と書くのですが、要するに太郎と次郎の三郎の「次郎」です。通説ですが、伊勢地方の子どもたちがスミレを太郎坊と呼び、この植物を次郎坊と呼んだことが命名の由来なのだと言われています。江戸時代の書籍「本草綱目啓蒙」に植物名が登場するとの情報があります。