←前に戻る

ヒトとすみれが共に生き抜く

進む→
サイドストーリー (つぶやきの棚 こぼれ話) 2003/02/22
 スズメという小鳥はヒトには滅多になつきませんが、人里遠く離れて暮らすことも滅多にありません。食と住と安全をヒトという存在に依存しながら、それでも野生を維持するという生活スタイルなのだと聞きます。
 すみれのような野草にも「ヒトとの関係」が生き延びるために重要な要素となっているケースがあるのです。
 「ヒトとの関係」の前提として、庭の栽培棚で育てることは一方的なものと思われますので除外しましょう。
キスミレ  阿蘇くじゅうの山々にキスミレの絨毯を見に行きました。一面に咲き誇る光景が目に焼き付いて離れません。ついつい足が向いて、もう三度も出掛けてしまいました。
 ご覧の通り、黄色い花は、草木が焼けて炭化した黒土に咲いています。あの有名な阿蘇の野焼きがキスミレの生命線なのです。野焼きが行われなくなれば、山には下草や灌木が生えて、徐々に高木が繁茂していき、疎林から森林に移行していきます。そうなると、草丈の低いキスミレは徐々に生育域を減らして、ついには絶滅に近い状態になってしまいます。
 一般に野焼きは牧草地の環境を維持するために行われてきました。現在では観光資源を維持するという目的もあるのでしょう。ただ、野焼きは危険な作業であり、極めて多くのボランティアに支えられて、やっと継続できています。観光や酪農など、経済的恩恵が伴わなければ難しいところなのだろうと想像しています。
 因みに、主に学術的な目的で行われる野焼きや、植物愛好家による下草伐採などもあるんですよ。
野焼き 野焼き 野焼き 野焼き
 阿蘇くじゅうの山々はとても広大です。一方、上の写真は(おそらく)関東で最大規模の野焼きの様子です。見渡すほど遠くまで黒煙が立ち上がって、空が真っ暗になりました。この規模の萱野を一気に焼こうという訳ですから、どれだけの人員が投入されているのか想像もつきません。
タチスミレ  風の冷たい時期に行われた野焼きから3ヶ月後。萱や多くの下草が元気に生えて、その隙間にタチスミレやハナムグラなどの絶滅危惧種が、意外な程に力強く立ち上がって花を咲かせていました。

 実は、北関東は福島第一原発事故の影響を受けてしまいました。つまり、野焼きによる放射性物質の飛散が懸念され、明確な規制や基準値などはなくて判断がつかず、安全配慮の立場から2年連続して、野焼きが実施されていなかったのです。
 安全確認調査と署名活動が行われていましたが、結果として影響は軽微との判断が出て、2013年は野焼きが実施されると知りました。詳しい知識がなくて分からないことばかりですが、少なくても事なかれ主義的な判断ではなかったものと理解しています。
 [ご説明] これだけ広大ですから、野焼きの実施場所が分かっても、このような珍しい植物たちが簡単に見つかるということではありません。少なくても見つけていただくために、この記事を書いているものでもありません。ご理解いただければ幸いです。
サイドストーリー
ページのトップへ戻る