日本には世界でも稀と言える程に多くのすみれが自生しています。この場合の「多くの」とは、国土面積の狭い日本のことですから、個体数のことではなくて種類のことでしょう。でも、この種類がクセモノですね。資料によって、その数値が千差万別になっています。所謂、「見解の相違」ということでしょう。
 つまり、誰が分類するかによって全く違う結果になってしまうのですが、その最大の理由は、要するに「見た目で判断しているに過ぎないから」ということかも知れません。AとBは同じ、CとDは違うと、見た目で決めて発表してきた結果ということです。
すみれの分類 五十歩百歩
 さて、改めて「見た目」って何でしょうか?花や葉の形状というレベルは言うに及ばず、当然ながら、顕微鏡で見る染色体パターン等も含む話です。問題は見た目が似ているグループをどのように分けるか、または同一視するかでした。

1) ある方は「毛が多い、少ない」、「花弁が上を向いている」、「花色が濃い、薄い」等でも分けています
2) ある方は「あるすみれの矮小種は分ける」、「別のすみれの矮小種は分けない」と基準が曖昧です
3) ある方は混生地で連続しているように見えるという理由で、典型品の違いを無視して同じものと決めました
4) ある方は姿形が似ている(類似点が多い)という理由で、生え方の違いを無視して同じものと決めました
5) ある方は「花期に葉に斑が入る」というものまで品種と見なしています(花後、斑は消失することが多い)

 それぞれについて、少しだけ補足をしておきましょう。
 1) について、実例を列挙しますとケタチツボスミレ、ソラムキタチツボスミレ、アカバナフイリシハイスミレ、ウスアカネスミレ等があります。パターンもまだあり、葉が小さいから「ショウヨウ(小葉)」、葉が灰色掛かっているから「ギンヨウ(銀葉)」、それから「クロバナ(黒花)」、「アカバナ(赤花)」等、多種多彩です。
 2) は、そのままですので省略させて下さい。
 3) は、一例を挙げれば、シハイスミレとマキノスミレの違いは認めず、変種としても品種としてもマキノスミレを抹消したケースが挙げられます。両者の典型品は異なる姿をしていますが、分ける必要がないと判断した方がいるという訳です。ただし、マジョリティは納得していないようですので浸透せず、当然ですが、そのままマキノスミレと呼んでいます。
 4) はフチゲオオバキスミレをイメージして書きました。フチゲオオバキスミレは葉の縁に毛があるかないか・・・だけではなくて、群落の様子も個体の生え方も、茎生葉の様子も違いますが、分ける必要がないとされました。現地でしっかり観察すれば誰の目にも違いが分かりますが、写真や標本を見ても分かり難いかも知れません。名前が与えるイメージが判断を誤らせた例だと思われます。
 5) はアカフタチツボスミレ等が該当するでしょう。花後に赤斑が消失したら、名前が変わるということでしょうか?消失後に確認したら、タチツボスミレの典型品になってしまいます。

 「見た目」で区別しようとする限り、誰が区別するかによって差異が生じるのは自明の理と言えましょう。より多くの個体を、より広い範囲で、実際に目にした経験値と注意力に加えて、運・不運にも大幅に左右されることになります。では、それを相互に自覚した上で、なんらか協議をして基準を作りましょう・・・、ということにはなっていないようですね。「程度の問題」を互いに、または一方的に批判して終わっているようにしか見えないところがあります。

 個人的に「毛が多い、少ない」というような程度で区別する考え方は、基準が曖昧で支持することは困難です。一方、アカネスミレという植物体全体に甚だ毛が多いという特徴を持つ基本種に対して、オカスミレはルーペで見ても毛がほとんど見えません。つまり、同定の権威者に頼る必要が無いような「明確さ」を持っているのです。
 花が「白っぽい」についても同様です。「シロバナ〇〇スミレ」の多くは白っぽいもので、ところどころに地色が見え隠れします。「オトメ〇〇スミレ」との境界線にも微妙なものがあり、明確な区別は不可能でしょう。しかしながら、植物学には「白変種」という定義があります。分かりやすく「純白」などと表現するもので、色素形成に関わる遺伝子群が予め組み込まれているとされているものです。やはり基準は明確ですね。
 このような基準に関する認識を共有すれば良いのであって、なにか権威を競るような主張をする人物がいることを残念に思います。

 さて、実はここからが本題かも知れないのですが、「見た目の」時代はもうすぐ終わろうとしています。「徒然草」等で以前から記載していましたので、もうバレバレなのですが、遺伝子情報を活用した新しい植物分類学が具現化の段階に入り、「APG植物分類体系」等が提唱されているからですね。1990年代以降、既にこの系統が主流なのですが、この流れに反して編纂を続けてきた「植物分類体系」と呼ばれる書籍は継続はしないことを決めているという訳です。
 現地で採取した葉等から、その場で分類を検査できる手法が確立したら、これまでの悩みは解消され、権威に振り回されることはなくなるでしょう。既にDNAバーコーディングという手法が存在しているのですが、このお話は別の機会に!

徒然草 2002/02/20 2007/03/01
2002/02/20 2007/03/01

(2008/01/16) Latest Update 2010/07/18
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