テリハタチツボスミレの特徴 (照葉立坪菫)
テリハタチツボスミレ
青森県 2008年5月9日
 時に、テリハタチツボスミレについて判別に悩むという話がありますが、知る限りでは、とても分かり易い姿をしています。どうでしょうか、これがテリハタチツボスミレです。
 随分昔のことですが、「違いがはっきりしているから、すぐ分かるよ!」と教えてもらったことがありました。地域によって型の違いが多少はあると思いますが、その言葉の通りでした。

 タチツボスミレ類(節)は、基本的に花の様子がどれも似ています。テリハタチツボスミレは葉に特徴がある訳ですから、葉に絞って観察した方がポイントを掴み易いでしょうね。

テリハタチツボスミレ テリハタチツボスミレ
独立種 テリハタチツボスミレ 青森県 2008年5月9日 Viola faurieana
ツヤスミレ シチトウスミレ
タチツボスミレの品種 ツヤスミレ 石川県 2008年4月3日
Viola grypoceras f. lucida
タチツボスミレの変種 シチトウスミレ 神奈川県 2010年3月21日
Viola grypoceras var. hichitoana
ツヤスミレ タチツボスミレ
タチツボスミレの品種 ツヤスミレ 愛知県 2012年4月26日 一般的なタチツボスミレ 千葉県 2005年4月9日
 同じタチツボスミレ類(節)とは言え、タチツボスミレの変種や品種と、独立種(つまり別種)であるテリハタチツボスミレを比較していること自体が不自然だと言われそうです。そして、ご覧の通り、テリハタチツボスミレの葉は扁平で厚みがあり、葉先が鈍頭で鋸歯が目立たず、基部がほぼ完全な切型なので『団扇』のような形をしています。一方、葉が先の尖ったハート型で、少し立体的で時に波打って凹凸があり、鋸歯が粗く、基部がはっきり切れ込むことがタチツボスミレの特徴です。形状がまるで違いますので、冒頭に記載の通り、一見して判別に悩むような姿ではありせん。
 特に葉の厚みですが、テリハタチツボスミレの葉を指で挟んだ後で、他のすみれの葉を摘んだら薄くてペラペラに感じてしまうことでしょう。それぐらい違います。

 言葉として、ツヤスミレやシチトウスミレに「タチツボスミレ」という言葉がなく、別種にテリハタチツボスミレという名前があることが何らかの作用を働かせているのかも知れないですね。

アワガタケスミレ アワガタケスミレ
独立種 アワガタケスミレ 新潟県 2010年4月26日 Viola awagatakensis
アワガタケスミレ ツルタチツボスミレ
独立種 アワガタケスミレ 植栽 2011年4月9日 変種or独立種 ツルタチツボスミレ 植栽 2012年4月7日
 自生する地域が一部一致していることもあり、テリハタチツボスミレとの関係で物議をかもしたのはアワガタケスミレとツルタチツボスミレです。こちらは葉の様子がかなり似ています。アワガタケスミレはテリハタチツボスミレとナガハシスミレの交雑種と言われていた理由がそこにあります。実際、交雑種起源である可能性も否定しきれませんが、現在は独立種として扱われています。ツルタチツボスミレも似ていますが、こちらは現在もタチツボスミレの変種なのか、独立種なのかと物議をかもしています。どちらかと言えば、独立種 Viola rhizomata とする意見が優勢でようですね。

テリハタチツボスミレ
青森県 2008年5月9日
 さて、最後に、葉以外でもテリハタチツボスミレの特徴が幾つかありますので紹介しておきます。先ず、自生地は森林地帯の林床や林縁で、今のところ、海岸に近い場所で出逢ったことはありません。それから、ポツポツと見つかる場合もありますが、ご覧の通り、一面に繁茂することがあります。茎を伸ばして、その先から新芽を出して増える性質によるものだそうです。丸い葉っぱが「おはじき」を並べたように地面から生えている姿は独特ですね。

 (2011/05/02) Latest Update 2019/03/27 [715KB]

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