コタチツボスミレ [タチツボスミレの変種/シーボルト型] (小立坪菫)
長崎県諫早市 2023年4月19日
兵庫県神戸市 2022年4月19日
神奈川県 2010年3月19日 植栽
展示会でしっかり観察することができました。どうやら、対馬で観察した個体群はコタチツボスミレで良さそうです。正直なところ、ほっとしています。
2010/12/30
分類 |
タチツボスミレ類 |
学名 |
基本種 |
タチツボスミレ Viola grypoceras A. Gray Published in: M. C. Perry, Narr. exped. China Seas Japan 2:308. (1857) |
変種 |
コタチツボスミレ Viola grypoceras var. exilis (Miq.) Nakai |
変種の品種 |
シロバナコタチツボスミレ Viola grypoceras var. exilis f. chionantha F.Maek. |
異名 |
Viola grypoceras f. yakusimensis (Masam.) Sugim.
Viola grypoceras var. lutchuensis (Nakai) Masam.
Viola grypoceras var. yakusimensis Masam.
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由来 |
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外語一般名 |
【韓】애기낚시제비꽃 |
茎の形態 |
特に葉が小さくて、節間が詰まっている点などを除き、タチツボスミレと変わらない。
【注】葉の基部が極端に浅いか切型であるとの説明は「タイプ標本」とは異なる。
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生育環境 |
分布 |
国内 |
海外 |
補足 |
花の特徴 |
形状 |
色 |
距 |
花期 |
花柱 |
芳香 |
補足 |
葉の特徴 |
形状 |
色 |
補足 |
種の特徴 |
形状 |
色 |
補足 |
根の特徴 |
絶滅危惧情報 |
山形県:絶滅危惧Ⅱ類、愛知県:絶滅危惧Ⅱ類 |
基準標本 |
長崎 |
染色体数 |
2n=20 |
参考情報 |
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その他 |
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このサイトを作り始めて、早いもので10年近い時間が経過しています。この期に及んで、コタチツボスミレのページを追加するか否か迷っていました。一応、追加することに決めたのですが、未だに、「これが本当にコタチツボスミレなのか?」という気持ちをぬぐい去ることができません。
いがりまさし氏は「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ(増補改訂版)」を出す時、少し位置づけを明確化したようです。それは、仮称であるタチツボスミレ(山陰型)との比較上、コタチツボスミレという名前を用いるのであって、元来はタチツボスミレに含めるべきだというものです。
浜栄助氏の「写真集 日本のすみれ(出典:S002)
」の当該ページには、「同じ地域のタチツボスミレと形態を分けている小型の集団を、コタチツボスミレと判断して良いと思われる」と記載されています。
2007/03/16
長崎県対馬市 2007年3月9日
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花の大きさは一般的なタチツボスミレと同様です
比較状、特に葉が小さいことが分かるでしょう
ただ、早春に見られる現象とも言えますが、
十分に展開した後と見られる株でも小さいのです
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長崎県対馬市 2007年3月9日
コタチツボスミレは分類学上の位置が不明確な種の一つです。身近では観察できず、旅先で意識して探したこともありましたが、なかなか「これだ!」という出逢いがありませんでした。
前述のいがり氏は、オランダの大学が収蔵するタイプ標本を確認するに至り、幾つかの書籍に示されていたコタチツボスミレの特徴のうち、「葉の基部が切り型になることが多い」、「葉脈が目立たない」、「葉身上部が(ロートを伏せたような形状に)尖らない」という3つの特徴について、どのタイプ標本にも見られなかったことを確認しました。つまり、比較的区別をしやすい特徴がコタチツボスミレのものではないという事態になった訳です。
実は、その3点をポイントとして探していた訳ですから、愕然としてしまいました。では、残されたタチツボスミレとの具体的相違はなんでしょうか。「鋸歯が粗く、はっきりしている」、「全体に小さく、特に葉が小さい」、「節間が詰まって伸びない」程度です。
さて、いがり氏は「コタチツボスミレの名は佐賀県以南に分布する小型の集団に使うのが正確である」と補足しています。この点、浜氏とは多少見解が異なるようですが、この「限定」に関する具体的な理由は記載されていません。では、どうしましょうか。なにしろ、今回の写真は長崎県とは言え、実際には対馬ですから、佐賀県以南には当たらないことになります。
2007/03/16
長崎県諫早市 2023年4月19日
長崎県諫早市 2023年4月20日
長崎県諫早市 2023年4月19日
久しぶりに、前述のいがり氏と話す機会がありました。トウカイスミレの論文掲載号が出版された直後でしたので、その周辺の話題が多かったのですが、タチツボスミレ(山陰型)などの話題に流れたタイミングで、諫早で目撃したタチツボスミレの葉がとても小さかったとの感想を口にしたところ、「シーボルト型のコタチツボスミレですよ」と補足されて、あー、そうだった!と思い出しました。
資料は何度か読み返すのですが、すっかり、失念していました。そうそう、その長崎のコタチツボスミレが発端ですよね。
2023/05/29