ツルタチツボスミレ (蔓立坪菫) [別名:クモノススミレ]
【注】近年の研究成果により、独立種として確認される可能性が極めて高い(発表待ち状態)。
ツルタチツボスミレ
それほど暗くない広葉樹の林道沿いに、たくさんの葉を展開しており、白く細い距を持つ繊細な印象の花が咲いていました。
広島県(北部) 2025年5月17日 alt.=800m

ツルタチツボスミレ
細くて白い距は、稀に上を向いて曲がる
ツルタチツボスミレ
とても細長い独特な蕾の姿に驚かされる
ツルタチツボスミレ
横に這う細い匍匐枝から地上茎と白い根が出る
ツルタチツボスミレ
萼は細長く、色が濃い、四角い付属体も目立つ
広島県(北部) 2025年5月17日

ツルタチツボスミレ ツルタチツボスミレ
東京都 2008年5月9日 植栽
分類 タチツボスミレ類(近年の研究でエゾノタチツボスミレの仲間と発表された)
学名 基本種 Viola rhizomata (Nakai) Ohwi Published in: Bot. Mag., Tokyo 49: 498 (1935) : Nakai
変種
品種
異名
Viola grypoceras A. Gray var. rhizomata (Nakai) Ohwi Published in: Bull. Natl. Sci. Mus. Tokyo 33: 80. (1935) : Ohwi.
Viola faurieana W. Becker var. rhizomata (Nakai) F.Maek. et T.Hashim.
タチツボスミレ、テリハタチツボスミレの変種説もあるが、独立種説を採用している。
由来 rhizomata : 根茎の、根茎がある
外語一般名
茎の形態 有茎種
生育環境 標高は若干高めに位置する水捌けが良く乾燥気味の明るい林縁(ブナ林)等。
分布 国内 秋田、北陸、中部から中国地方の日本海側(標高800~1,700m程度の山地)。日本海要素。
海外
補足
花の特徴 形状 中輪。タチツボスミレの標準品に比べて細め。側弁の基部は無毛。
淡い紫色。
白色。円筒状で先が細く、上に曲がる傾向がある(広島の観察地では、上に曲がる距も見られたが、その数は多くはなかった)。
花期 5月~6月上旬。
花柱 棍棒形。
芳香 感じられない。
補足 花数は葉に比して多くない。蕾が極めて細長い。
葉の特徴 形状 タチツボスミレ(山陰型)を彷彿とさせる幅が広い偏三角形で、基部は切形または浅い心形。先端は軽く尖る。*以下参照
表面は深緑色で光沢がある。裏面は淡緑色。
補足 両面とも無毛。前年の根生葉は葉の質がやや堅いとされる。托葉は大雑把な櫛の歯状。
種の特徴 形状 倒卵形。へその方へ尖る。中粒。
種子:茶褐色、種枕(エライオソーム):淡褐白色。光沢がある。
補足 果実一つ当たり、6~15個程度結実するとされる。
根の特徴 立ち上がる株の真下に白い髭根が展開する。縦に伸びる主根は見られない。地下茎の途中には、支える程度の少ない根が出る。
絶滅危惧情報 秋田県:絶滅危惧Ⅰ類、山形県:絶滅危惧Ⅰ類、新潟県:地域個体群、石川県:絶滅危惧Ⅱ類、京都府:絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県:絶滅危惧Ⅰ類、鳥取県:絶滅危惧Ⅱ類、岡山県:絶滅危惧Ⅱ類
基準標本
染色体数 2n=20
参考情報
タチツボスミレ類における「種」の存在様式の解析 代表研究者・植田邦彦(金沢大学)
その他 多雪地帯に適応したものと考えられており、蔓状に茎を伸ばして新株をつくる性質を持つ。一面に拡がる傾向からクモノススミレとの別名がある(注)。
 以前、広島と鳥取の県境でツルタチツボスミレと思わせる個体に出逢ったことがありましたが、葉質は柔らかそうで、茎の伸びも想像より短めだったため、不明扱いとした記憶があります。結果的に植栽品として本種を目にしましたが、花が終えそうな時期で、茎がTVアンテナのように枝分かれしていたのが印象的でした。ただ、葉質はテリハタチツボスミレとはまるで違う柔らかいイメージだったことが意外です。
2008/05/14

 ツルタチツボスミレに対する位置づけについては紆余曲折がありました。本多隆成氏が福井県の部子山で採集(1933年6月4日)して、東大教授、中井猛之進博士WHO!が植物学雑誌に新種として発表(1935年)したが、その後、タチツボスミレやテリハタチツボスミレの変種説が唱えられます。
 金沢大学による2011年から2014年の研究によると、「新独立種として記載予定の『山陰型タチツボスミレ』から派生した独立種であるとの結論が得られた。さらに、どちらかといえば、エゾノタチツボスミレ類に入る結果となったが、詳細はさらなる解析が必要である。」とされています。結果、一巡して独立説に戻ったことになります。
2017/10/28、2021/06/14

ツルタチツボスミレ
前年の葉なのか、色が濃く、平坦かつ堅そうな印象を与えている
ツルタチツボスミレ
一方、巻いている初期段階の葉は、明るく、柔らかそうに見える
ツルタチツボスミレ
葉に注目すると、『山陰型タチツボスミレ』から派生したとの説明がしっくりくるような葉の形状と葉質を持っていることが分かる。
 堅そうな印象の葉の方を見ると、テリハタチツボスミレの変種という説があったことも、確かに理解できる。暗く濃い色で、光沢があり、厚みも感じられる。実際、『山陰型タチツボスミレ』から派生した独立種と発表されるらしいとの情報がある。
2025/05/19

ツルタチツボスミレ
枯れ葉を除けるだけで、簡単に根が露出するが、不思議なことに、ほとんど土がついていない。
 広葉樹の枯れ葉を除けると、根茎が露出していて、その様子から匍匐枝(ストロン)と表現すべきかも知れない。指で軽くほぐすしながら、隣の株まで辿ることができて、一面の株たちが繋がっていることが分かる。所謂、ネットワーク構造をしていて、イチゴのように繋がっているということは、そのネットワーク内は同じ株ということになるのだろう。フワフワの白い髭根があり、縦に走る主根は見当たらない。もしかすると、この姿が「クモノススミレ」という別名に繋がっているのかも知れない(注)。
2025/05/19

ツルタチツボスミレ
一面を覆うように葉が展開しているが、これは、果たして、株数にして何株なのだろうかと思い巡らしていた。葉に比べれば、花数は多くない。
広島県(北部) 2025年5月17日

(つぶやきの棚)徒然草

 (2011/04/10) Latest Update 2026/01/01 [2.02MB]

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