ツルタチツボスミレ (蔓立坪菫) [別名:クモノススミレ]
【注】近年の研究成果により、独立種として確認される可能性が極めて高い(発表待ち状態)。
ツルタチツボスミレ ツルタチツボスミレ
東京都 2008年5月9日 植栽
分類 タチツボスミレ類(近年の研究でエゾノタチツボスミレの仲間と発表された)
学名 基本種 Viola rhizomata (Nakai) Ohwi
変種
品種
異名
Viola grypoceras A. Gray var. rhizomata (Nakai) Ohwi
Viola faurieana W. Becker var. rhizomata (Nakai) F.Maek. et T.Hashim.
タチツボスミレ、テリハタチツボスミレの変種説もあるが、独立種説を採用している。
由来 rhizomata : 根茎の、根茎がある
外語一般名
茎の形態 有茎種
生育環境 標高は若干高めに位置する水捌けが良く乾燥気味の明るい林縁(ブナ林)等。
分布 国内 秋田、北陸、中部から中国地方の日本海側(標高800~1,700m程度の山地)。日本海要素。
海外
補足
花の特徴 形状 中輪。タチツボスミレの標準品に比べて細め。側弁の基部は無毛。
淡い紫色。
白色。円筒状で先が細く、上に曲がる傾向がある。
花期 5月~6月上旬。
花柱 棍棒形。
芳香
補足 花数は多くない。
葉の特徴 形状 葉は幅が広い偏三角形、基部は切形または浅い心形。先端は軽く尖る。
表面は深緑色で光沢がある。裏面は淡緑色。
補足 両面とも無毛。前年の根生葉は葉の質がやや堅いとされる。托葉は大雑把な櫛の歯状。
種の特徴 形状 倒卵形。へその方へ尖る。中粒。
種子:茶褐色、種枕(エライオソーム):淡褐白色。光沢がある。
補足 果実一つ当たり、6~15個程度結実するとされる。
根の特徴
絶滅危惧情報 秋田県:絶滅危惧Ⅰ類、山形県:絶滅危惧Ⅰ類、新潟県:地域個体群、石川県:絶滅危惧Ⅱ類、京都府:絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県:絶滅危惧Ⅰ類、鳥取県:絶滅危惧Ⅱ類、岡山県:絶滅危惧Ⅱ類
基準標本
染色体数 2n=20
参考情報
タチツボスミレ類における「種」の存在様式の解析 代表研究者・植田邦彦(金沢大学)
その他 多雪地帯に適応したものと考えられており、蔓状に茎を伸ばして新株をつくる性質を持つ。一面に拡がる傾向からクモノススミレとの別名がある。
 以前、広島と鳥取の県境でツルタチツボスミレと思わせる個体に出逢ったことがありましたが、葉質は柔らかそうで、茎の伸びも想像より短めだったため、不明扱いとした記憶があります。結果的に植栽品として本種を目にしましたが、花が終えそうな時期で、茎がTVアンテナのように枝分かれしていたのが印象的でした。ただ、葉質はテリハタチツボスミレとはまるで違う柔らかいイメージだったことが意外です。
2008/05/14

 ツルタチツボスミレに対する位置づけについては紆余曲折がありました。本多隆成氏が福井県の部子山で採集(1933年6月4日)して、東大教授、中井猛之進博士WHO!が植物学雑誌に新種として発表(1935年)したが、その後、タチツボスミレやテリハタチツボスミレの変種説が唱えられます。
 金沢大学による2011年から2014年の研究によると、「新独立種として記載予定の『山陰型タチツボスミレ』から派生した独立種であるとの結論が得られた。さらに、どちらかといえば、エゾノタチツボスミレ類に入る結果となったが、詳細はさらなる解析が必要である。」とされています。結果、一巡して独立説に戻ったことになります。
2017/10/28、2021/06/14


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 (2011/04/10) Latest Update 2023/10/08 [75KB]

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