タチツボスミレ(山陰型) (立坪菫) [山陰型、日本海型、正式な名称は存在しない状態]
タチツボスミレ(山陰型)
福井県 2008年4月2日
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
2008年4月2日 福井県 2008年4月3日
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
葉の形態が微妙に異なる 2008年4月4日 福井県 2008年4月3日 花茎の色が極めて赤い
分類 タチツボスミレ類 タチツボスミレの一型(コタチツボスミレに近い変種?)
学名 基本種 Viola grypoceras hort. ex.
変種
品種
異名
由来
外語一般名
茎の形態 有茎種
生育環境 乾燥気味の明るい林縁等。
分布 国内 北陸、中部から中国地方、四国から九州の一部。
海外
補足
花の特徴 形状 小輪から中輪。側弁の基部は無毛。
淡い紫。
紫色。
花期 4月から5月。
花柱 棍棒形。
芳香
補足 基本種と大きな違いは見られない。
葉の特徴 形状 全体は幅があり小型(1.5~2cm)の心形、菱形も見られる。葉柄が比較的長め。
両面とも緑色。茎は淡い紫色。
補足 両面とも無毛。基部は切型または浅い心形。先端は軽く尖る。葉脈HELP!が目立たない。托葉は大雑把な櫛の歯状。
種の特徴 形状 母種を参照されたい。
補足
根の特徴
絶滅危惧情報
基準標本
染色体数
参考情報
その他 草丈は5~10cmと小さい。生え方は斜上する(一応、立ち性の範疇)。密生する傾向がある。
花後、匍匐枝(茎)HELP!が展開するとのこと。

 少し前までなら、このグループはコタチツボスミレとして紹介されていました。でも、シーボルトに関連するというタイプ標本を確認したところ、コタチツボスミレには該当しないということが判明したため、「じゃあ、これは何ですか?」ということになった訳です。
2007/05/03

 一方、長い間、個人としてコタチツボスミレを確認(確定認識)できないままだったのですが、最近になって、これがそうなのかな、という個体に出逢いました。その経緯についてはコタチツボスミレのページを読んでいただきたいのですが、その対比上、タチツボスミレ(山陰型)を確認しておきたくて、越前と呼ばれる地域までやって来ました。
 このタイプですが、タチツボスミレ(山陰型)とか、山陰型タチツボスミレとか、はたまたサンインタチツボスミレ、山陰型コタチツボスミレ、日本海型タチツボスミレ云々と、いろいろな名前で呼ばれるようになってしまいました。最もよく知られているのは「増補改訂日本のスミレ(いがりまさしWHO!著)」における記述でしょう。いずれにしても、いがり氏が一冊の書籍の中で「仮称」として、あくまで暫定的に付けただけですから、どれが正しいとか、相応しいというべき筋のものではありません。つまり、裸名も固まっていない状態なのです。このサイトでは、必要上、今からはタチツボスミレ(山陰型)という表現にします。ただし、過去の記述までは修正できないかも知れません。
 全国で最も多く分布しているであろうスミレはタチツボスミレですが、その一形態と理解しており、特徴は植物体全体が小さめで、茎がほとんど立ち上がらないグループの内、葉の基部が切型(フラットに切れているスペード形)の個体です。
2008/04/17

 繰り返しになりますが、これまではコタチツボスミレの特徴と言われていた葉の基部形状ですが、シーボルトが長崎近辺で採集されたものを持ち帰ったというタイプ標本を確認してみたところ、切型の特徴を示す標本はないことが判明したという訳です。話が違うじゃないか。では、この切型はいったい何なのだろうというのが現段階でしょう。当然ですが、今は情報の混乱期にあり、牧野富太郎博士WHO!の情報を基礎とするほとんどの書籍にはコタチツボスミレの典型的な特徴として記載されている訳です。それを引用したサイトなども同様ですが、今年(2008年)になると「山陰型」という言葉が急速に普及してきた様子です。でも、ほんの僅かな違いだということも事実ですので、この点は頭に入れておいた方が良いと思いますね。
2008/04/17


タチツボスミレ(山陰型)
鳥取県江府町 2007年4月29日 alt.=650m
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
鳥取県江府町 2007年4月29日

タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
愛媛県西条市 2009年5月10日 alt.=1,000m
タチツボスミレ(山陰型) タチツボスミレ(山陰型)
群馬県利根郡 2023年4月29日 高知県高岡郡 2009年5月8日 alt.=500m

 山陽から山陰地方を旅して思ったことですが、とにかく、オオタチツボスミレやタチツボスミレ系の変種や品種が多くて、小さいグループは良く似ていると思いました。花期には葉の基部が(明確に)切型または浅い心形で、葉脈HELP!が目立たないと言う特徴から、区別はできそうでした。花後、匍匐枝(茎)が展開していくという性質については、もう一度訪ねるか、育ててみるしかありません。この名前でタネを入手できると良いですね。
2007/05/03

 たまたま既に学名があったトウカイスミレの場合と異なり、言葉としての「山陰」だけが先行している実態があります。キッカケとなったいがりまさし氏の説明を理解の上、それなりに使い分けている方が多いのですが、一方で、とても微妙な使い方をされてしまっているケースも少なくありません。
2011/02/03

 2012年辺りからだと認識していますが、すみれの展示会などでシラサキタチツボスミレ(またはシラサキスミレ)と明示されるケースが見られるようになりました。長年、探求を続けられている白崎重雄氏を称える主旨と認識しており、その名前を用いたい、表記したいという気持ちは理解できましたが、ただ、「仮称」という補足がないのは気になりました。一般の方々がご覧になる展示会で断定的な表現を用いることは、結果的に混乱を生み出しかねないのではないかという懸念を持ったものです。
2014/10/27


 タチツボスミレ(山陰型)などと表記されていましたが、最近、いがり氏WHO!のサイトでは「サンインタチツボスミレ(仮称)」と表記されていました。
 しばらく、自生地で観察していなかったためか、目の前の個体群を見て「小さくて、のっぺりした葉をしているなぁ!」ぐらいに思っていたのです。前を歩く、いがり氏が「ここにも山陰型が自生している」というような説明していたので、あー、そうか!と記憶を繋いでいました。群馬県での自生について「隔離分布的」と表現していたように思います。先週までいた長崎では「極めて葉が小さいタチツボスミレばかりだった」といった話をすると、シーボルト一行が採集したコタチツボスミレの話に繋がり、トウカイスミレの論文の経緯とか、ナガハシスミレの学名はどうなるのか、といった話題にずるずると繋がってしまいました(笑)。
2023/05/13


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 (2007/05/03) Latest Update 2023/05/13 [1.10MB]

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