マキノスミレ [シハイスミレの変種] (牧野菫) [別名:ホソバスミレ、ヒメシハイスミレ(但し、極めて稀)]
- フイリマキノスミレ (斑入牧野菫)
- シロバナマキノスミレ (白花牧野菫) [俗称]
- ハグロマキノスミレ (葉黒牧野菫) [俗称]
福井県敦賀市 2008年4月2日
群馬県利根郡 2023年4月29日
分類 |
ミヤマスミレ類 |
学名 |
基本種 |
シハイスミレ Viola violacea Makino Published in: Ill. Fl. Jap. 1: t. 67. (1891) |
変種 |
<標準和名として扱うもの>
マキノスミレ Viola violacea var. makinoi (Boiss.) Hiyama ex F.Maek.
フイリマキノスミレ Viola violacea var. makinoi f. variegata E.Hama
シナノスミレ Viola violacea var. tanakaeana (Makino) Hashimoto
<上記以外>
フイリシナノスミレ Viola violacea var. tanakaeana f. okuharae E.Hama
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品種 |
<標準和名として扱うもの>
コンピラスミレ Viola violacea f. pictifolia Honda
シロバナシハイスミレ Viola violacea f. albida (Nakai) F.Maek.
フイリシハイスミレ Viola violacea f. versicolor E.Hama Published in: J. Jap. Bot., 51(11): 341. (1976)
ミドリシハイスミレ Viola violacea f. concolor Nakash.
<上記以外>
アカバナシハイスミレ Viola violacea f. rubra E.Hama Published in: J. Jap. Bot., 51(11): 342. (1976)
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異名 |
マキノスミレ Viola makinoi H.Boissieu Published in: Bull. Soc. Bot. Fr. 47: 320. (1900) |
俗名 |
シロバナマキノスミレ、ハグロマキノスミレ |
由来 |
violacea : 紫紅色の、菫色の、makinoi : 人名由来、植物学者の牧野富太郎博士に Henri de Boissieu が献名 |
外語一般名 |
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茎の形態 |
無茎種 |
生育環境 |
山地の明るく乾燥気味の林下、林縁に見られる。 |
分布 |
国内 |
母種は北海道から屋久島まで分布する。個体数は中部以北の低山に多い。マキノスミレ自体は東日本(近畿から東北)に多い。 |
海外 |
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補足 |
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花の特徴 |
形状 |
中輪。変異が多い。通常、側弁は無毛。 |
色 |
すっきりとした紅紫色が美しい。母種より濃い色合いの個体が多い。 |
距 |
長めの円筒状。 |
花期 |
普通。 |
花柱 |
カマキリの頭形。 |
芳香 |
あり。 |
補足 |
萼片は披針形、付属体は丸く、通常は全縁。花茎に赤味が見られることが多い。 |
葉の特徴 |
形状 |
母種に比して細長い長三角状披針形。先端は尖り、基部は湾入する心形。無毛。 |
色 |
濃緑色で光沢がある。裏面は初期に薄紫を帯び、後に淡緑色となることが多い。 |
補足 |
葉柄が長く、ほぼ垂直に立つ特徴がある。厚め。のびやかな鋸歯がある。 |
種の特徴 |
形状 |
茶褐色で丸みのある果実。
表面には薄い斑点が見られる。
(岩手県奥州市 20011年5月14日)
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色 |
補足 |
根の特徴 |
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絶滅危惧情報 |
千葉県:絶滅危惧Ⅰ類、東京都:絶滅危惧Ⅰ類、神奈川県:絶滅危惧Ⅰ類、埼玉県:絶滅危惧Ⅱ類、長野県:準絶滅危惧種 |
基準標本 |
金沢 |
染色体数 |
2n=24 |
参考情報 |
シハイスミレとその狭葉変種マキノスミレの分子系統解析とその分布 (兵庫県立小野高等学校)藤原正人氏 |
その他 |
位置づけとしてはシハイスミレの変種に当たる。境目がはっきりしない場合がある。
"Flora of Japan, Vol. IIc"では母種にまとめられた。ただ、関係者以外で、この見解を支持する主要な文献や意見は見当たらず、当該資料の取扱いは極めて難しい。
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愛知県 2008年4月5日 植栽
稀にシハイスミレっぽさを見せる株が混じっているところが、なかなか悩ましいところです
千葉県自然誌の植物編に掲載されたのは2003年のこと、シハイスミレとの中間型ながら、マキノスミレ寄りの性質です
千葉県 2013年4月6日
岩手県花巻市 2002年5月3日
明るい丘で見られるスミレ 個体数は少なめのようだ、ぜひ、大事にしたい(2023年、リバーサルフィルムからデジタイズ)
新潟県新発田市(旧加治川村) 2001年4月29日
新潟県胎内市(旧中条町) 2001年4月28日
長野県塩尻市 2013年5月12日 alt.=1,000m
福井県敦賀市 2008年4月2日 (目盛りは合成)
岩手県奥州市 2011年5月15日
花色の美しさではマキノスミレはトップクラスではないかと、ひそかに思います(^o^)v (まぁ、これは主観の問題)。新潟では、先導する車の後を追っただけなので、どうも、そこがどこなのかを明確に確認できないままでした。
2001/05/02
シハイスミレとマキノスミレの境界線について、典型品は良いのですが、中間的な個体の悩ましさはすみれの中でもピカ一ではないかと思います。以前、「これはシハイスミレでしょうか?」という問い合わせをいただいた折、簡単に「それで問題ないのでは」と答えていたのですが、最近、中間的な個体に出逢って、自分の目で見ておきながら迷いました。やはり、難しい面があります。
2008/04/10
前述の通り、"Flora of Japan, Vol.IIc(岩槻邦男/D.E.Boufford/大場秀章編)"では母種にまとめられて存在を否定された変種ですが、実際には単独の見解に終わり、その後も従前通りに扱われています。なぜ、このようなことになったのか良くわかりません。シハイスミレと混在する地域において「母種との移行型があり、連続している」という理由付けでは説得力がなかったということでしょう。まぁ、「そうではない変種や品種があるだろうか?」と考えれば当然の帰結です。それを否定することは「変種」や「品種」という基本的な定義を否定するに等しく、この不思議な考え方は通用しなかったのだろうと思われます。
「毛が少し多め」だとか、「色が淡い」等という感性的な違いで細かく分けることは、徒に分類を不便にするだけのことであり、科学的な考え方でないことは明らかです。しかしながら、葉や茎、花など基本的な要素や生育の状況に関する明確な違いを無視して、無理に同じだとすることは本末転倒というものでしょう。
分類について見解の統一が難しいのは、「差異」に関する程度の認識が、現状はほぼ「見た目」だけで判断されていることに由来します。つまり、アナログなのですね。一方、デジタルな解決手段が具現化し始めたのは1900年代前半です。今後は、余り無茶な見解が世に出ることは減ることでしょう。
2008/01/21
信用性が高いと判断できる写真付きの情報を得ましたので、分布図の茨城県に「一般情報」をマークすることにします。計画では、今春に自生確認ができると思っていたのですが、タイミングが合わず、来年以降に延期した経緯があります。
2008/06/09
北海道新聞社刊「北海道の野の花」の記載がきっかけですが、道南で多くの報告がありますので、分布図の北海道に「書籍情報」をマークすることにします。
2009/01/24
最近入手したばかりの「私の出会った山形のスミレたち(鹿間広治氏)」にシハイスミレとマキノスミレの交雑種に関わる記述として、稀有な存在であり、かつ不稔であるとの内容がありました。ただし、これには少し違和感があったのです。
関東もそうですが、シハイスミレとマキノスミレの混生地では中間的な個体が殖える傾向がありますので、稔性または不完全稔性があるものと感覚的に認識していたからです。それから、何かの報告(論文)を読んでいた記憶がありました。探したところ、兵庫県立小野高等学校の報告書に『生殖的な隔離はないと考えられる』とありました。参考情報にリンクしておりますので参照ください。
2021/09/09
シハイスミレかな? マキノスミレ・・・かな?