シロスミレ (白菫) [基本種] [別名:シロバナスミレ、エゾシロバナスミレ]
- トヨコロスミレ [白花変種] (豊頃菫)
- ホソバシロスミレ [変種] (細葉白菫)
長野県塩尻市 2008年6月15日
分類 |
ミヤマスミレ類 |
学名 |
基本種 |
シロスミレ Viola patrinii DC. ex Ging. Published in: Prodr. 1:293 (1824) |
変種 |
ホソバシロスミレ Viola patrinii var. angustifolia Regel.Published in: Bull. Soc. Imp. Naturalistes Moscou 34(II): 476 (1862) |
品種 |
トヨコロスミレ Viola patrinii f. toyokoroensis Koji ItoPublished in: J. Jap. Bot.,71: 301 (1996) |
異名 |
Viola patrinii f. hispida W.Becker
Viola primulifolia var. glabra Nakai
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由来 |
patrinii : 人名に由来する E. L. M. Patrin, 1742-1814 フランスの植物採集家 |
外語一般名 |
【中】 白花地丁、白花堇菜 |
茎の形態 |
無茎種 |
生育環境 |
湿った高原(草原)などで見られる。中部地方では標高1,000m以上の高原に限定される。北海道では海岸の原生花園など、低地で見られる。 |
分布 |
国内 |
北海道の太平洋側、岩手、中部。ホソバシロスミレは四国、九州、中国地方。 |
海外 |
東アジア、北アジア、シベリア、ロシア。 |
補足 |
大陸系遺存植物、満鮮要素と説明されることがある(ホソバシロスミレを説明するものと推察)。 |
花の特徴 |
形状 |
中輪。全体はアリアケスミレ、中心部はヒカゲスミレに似ている。側弁の毛が目立つ。 |
色 |
白い花弁、側弁と唇弁に紫条が入る。 |
距 |
短い白色。少し緑色を帯びている。 エゾノタチツボスミレと同様、左右から合わせたような筋がある場合がある。 |
花期 |
遅い(5月~6月)。 |
花柱 |
カマキリの頭形(虫頭形)。 |
芳香 |
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補足 |
萼片は披針形、鈍頭。上弁が軽く反り返る傾向がある。稀に側弁に毛がない型も見られる。 |
葉の特徴 |
形状 |
長く丸い披針形。先端は鈍頭、基部は浅い心形または切形。鋸歯は極めて低い。
葉身が葉柄に比較して短く、直立する傾向がある。スミレに似で葉柄に翼
がある。
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色 |
両面とも緑色。 |
補足 |
稀に葉脈上に白い微毛が見られる。ホソバシロスミレは明確な鉾型を呈する。 |
種の特徴 |
形状 |
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色 |
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補足 |
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根の特徴 |
褐色。 |
絶滅危惧情報 |
シロスミレ:
山形県:絶滅危惧Ⅰ類、福島県:準絶滅危惧種、東京都:絶滅危惧Ⅰ類、愛知県:絶滅危惧Ⅰ類、岐阜県:絶滅危惧Ⅰ類
宮城県絶滅(EX)「宮城県の希少な野生動植物-宮城県レッドリスト2013年版-」
ホソバシロスミレ:
兵庫県:絶滅危惧Ⅱ類、和歌山県:絶滅危惧Ⅰ類、広島県:絶滅危惧Ⅰ類、山口県:絶滅危惧Ⅱ類、徳島県:絶滅危惧Ⅰ類、高知県:絶滅危惧Ⅰ類、愛媛県:準絶滅危惧種、福岡県:絶滅危惧Ⅰ類、大分県:準絶滅危惧種、佐賀県:絶滅
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基準標本 |
シロスミレ:シベリア、トヨコロスミレ:長節沼(長節湖) |
染色体数 |
2n=24 (Nishikawa, T., 1986, Journal of Hokkaido University of Education : Section IIB) |
参考情報 |
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その他 |
紫条が入らない白花変種をトヨコロスミレと呼ぶ(北海道の地名に由来する)。
参考まで、植物体全体が無毛の型をハダカシロスミレ f. glabra (Nakai) F.Maek.、
花柄および葉柄が疎毛の型をジクゲシロスミレ f. prunellifolia Maxim. と呼ぶことがあった。
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少し早めに出かけたので、少し不安でしたが、何とか探し出すことができました。高地の草原に点在しているのを見つけた時には、少し興奮状態!そばにマンジュリカがあって、確信を持てていませんが、マンジュリカとシロスミレの交雑種であるキリガミネスミレらしき個体も見られました。スズランといっしょに咲いていましたが、ともに清楚なイメージの高山植物です。
2001/06/07
2度目は、とてもたくさんのシロスミレに出逢うことができました。広い草原のあちこちに少しずつまとまって咲いている様子は、マンジュリカに似ていますね。でも、白いすみれの撮影は難しいと思わせる種のひとつです。
2003/06/13
2010年、釧路湿原を巡り、そろそろ帰り便に乗ろうと釧路空港に向かう直前のことでした。湿原、つまり標高20mにも満たないエリアで、全く偶然にシロスミレと遭遇してしまいました。北海道ではオオバタチツボスミレが海岸沿いの砂州で普通に観察できるのです。本州では2,000m級の高地で生育するので交雑相手に恵まれず、交雑種のバリエーションも限定的だと思っていましたが、北海道では特に制限はないことになりますね。
2013/12/07
北海道にはアリアケスミレと見紛うシロスミレが咲くそうです。アリアケスミレは北海道に自生記録がないという前提がないと、同定判断をミスりそうですので、葉に注目して、落ち着いて葉身と葉柄の長さを比べてみましょう。葉柄が長い方がシロスミレで、葉身が長い方がアリアケスミレです。
2016/07/18
北海道の湿原で発見されたトヨコロスミレは、まだ新しく認識されたスミレと言って良いでしょう。新種として論文発表されたのは1996年のことだそうです。是非、いつか自生地を訪ねたいところです。やはり、開花時期は6月とのことでした。(注:2022年に訪問)
2016/09/18
自然写真家の佐藤照雄氏によると、近年、トヨコロスミレが既存の自生地から離れた場所でも見出されたそうです。説明を読むと、自生環境は似ているように思われます。これは九州のアソヒカゲスミレ的なうれしい展開ですね。
2020/01/03
長野県塩尻市 2007年6月1日 alt.=1620m
とても美しいスミレだと思います
風の強い草原でフラフラしながらも、細長い茎なのに立ち上がります
花の中心部が黄色っぽいところが、ヒカゲスミレに似ています
長野県諏訪市 2001年6月2日
長野県塩尻市 2003年6月7日
北海道釧路市 2010年6月3日 alt.=18m
長野県諏訪市 2010年6月20日 alt.=1,600-1,700m