ゲンジスミレ [フイリゲンジスミレの変種] (源氏菫) [別名:マルバシハイスミレ]
ゲンジスミレ
山梨県南津留郡 2011年4月30日
ゲンジスミレ ゲンジスミレ
山梨県北杜市 2023年5月3日

ゲンジスミレ ゲンジスミレ
2005年5月4日 山梨県南津留郡 2004年4月30日
ゲンジスミレ ゲンジスミレ
山梨県南津留郡 2008年4月30日
分類 ミヤマスミレ類
学名 基本種 フイリゲンジスミレ Viola variegata Fisch. ex DC.: (cf. Fisch. ex Gingins, Fisch. ex Link)
変種
ゲンジスミレ Viola variegata var. nipponica Makino Published in:B. M. T. 16: 159 (1902)
ミドリゲンジスミレ Viola variegata var. nipponica f. viridis (Kitag.) Kitag.
品種
異名
Viola variegata f. nipponica (Makino) F.Maek.
イヨスミレ Viola umemurae Makino Published in:B. M. T. 16: 131 (1902)
由来 variegata : 斑紋がある、斑入りの、 nipponica : 日本の、
umemurae : 人名由来、本草学者の梅村甚太郎(1862-1946)に牧野富太郎博士が献名
外語一般名 【中】班葉菫菜、斑叶菫菜、【韓】알록제비꽃、【英】Cyclamen leaf Violet, Variegated leaf Violet
茎の形態 無茎種
生育環境 陽当たりの良い乾燥気味の落葉樹林下、崩落した法面などに見られる。
分布 国内 北東北、中部から関東の内陸部、岡山、愛媛に隔離分布する。個体数は少ない。
海外 母種が中国、朝鮮、シベリア等で見られ、更に数種の変種および品種が知られる。
補足
花の特徴 形状 中輪。側弁の基部は有毛。
淡い紅紫で、裏面の方が色が濃い。各花弁に紫条が入る。中心部が黄緑色かかる。
太い円筒形。
花期 比較的早い。
花柱 カマキリの頭状(型)。
芳香 複数の報告から、芳香があるものと推察するが、自生地では確認できていない。
補足 花茎が短め。花茎には微毛が密生する。
葉の特徴 形状 卵型から円形で基部は心形。両面に微毛が見られる。
表面は暗い緑色から暗褐色、裏面は紫色を帯びる(淡い緑色の個体も見られる)。
補足 フイリゲンジスミレには葉脈HELP!に沿う白斑がある(ゲンジスミレにも少し見られる)。
種の特徴 形状 倒卵形。中粒。
象毛色に近い淡い茶褐色。
補足 果実は赤みのある茶褐色で白い微毛が密生している。
根の特徴 白い髭根。
絶滅危惧情報 青森県:準絶滅危惧種、秋田県:絶滅危惧Ⅰ類、岩手県:絶滅危惧Ⅱ類、栃木県:準絶滅危惧種、群馬県:絶滅危惧Ⅱ類、埼玉県:絶滅危惧Ⅰ類、東京都:絶滅危惧Ⅰ類、神奈川県:絶滅危惧Ⅰ類、広島県:絶滅危惧Ⅱ類、愛媛県:絶滅危惧Ⅰ類
基準標本
ゲンジスミレ : 長野市旧荒安村 田中貢一 1902年5月24日
イヨスミレ : 愛媛県松山市(旧北条市)腰折山 梅村甚太郎 1898年4月17日 牧野標本館収蔵、松山市天然記念物(1972年指定)
染色体数 2n=24 (Rudyka, E. G., 1990, Botanicheskii Žhurnal)
参考情報
「イヨスミレ」について (愛媛県松山市公式ホームページより)
その他 一般の資料では「別名:イヨスミレ」等と表現される。葉の裏面や花色が比較的淡く、愛媛県松山市の梅村甚太郎氏(上記参照)が旧北条市で発見した個体を牧野富太郎博士が「伊予すみれ」( Viola umemurae Makino )と命名、後にゲンジスミレに統合された経緯を持つ。
前川文夫博士の説によれば、同種は大陸と繋がっていた氷河時代の遺存種である。南下したルートにより2系統があり、長野県付近のゲンジスミレは満州系と表現され、一方、イヨスミレの方は朝鮮半島系で、フイリゲンジスミレに近縁とされる。(注:平成になって、山形大学の研究者がDNA比較を実施したところ、「全く同じDNAを持っていることががわかった」との報告がある。)
中国、朝鮮半島等に分布するフイリゲンジスミレが母種となる。その意味では外国種に分類しても良い訳だが、日本に自生する変種があるという位置づけで分類した。ただし、花の様子はかなり異なる。母種は、日本の変種に比べて花の色合いが濃く、紅色と呼ぶべき色合いもある。
葉の特徴から、欧州でシクラメンリーフバイオレットという呼び名が通るという。
ゲンジスミレ
東京都 1998年4月5日 植栽
フイリゲンジスミレ
東京都 1998年4月5日 植栽
フイリゲンジスミレ
フイリゲンジスミレ2000年7月16日 植栽
すみれたちの中でも、かなりへそ曲がりなのだそうです
でも、うまく育てることができれば、写真の通り!ただし、私が育てたものではありません(念のため)
ゲンジスミレ
山梨県南津留郡 2001年5月5日
自然の中で初めて観察した個体ですが、既に時期が遅いようで、花は一つだけでした
ゲンジスミレ ゲンジスミレ
山梨県南津留郡 2003年4月26日
2番目に見つけた個体たちです、この時は多彩な表情を見ることができました
ゲンジスミレ
神奈川県 2008年3月23日 植栽
ゲンジスミレ
山梨県南津留郡 2004年4月30日

ゲンジスミレ ゲンジスミレ
山梨県北杜市 2013年4月13日

ゲンジスミレ
千葉県 2011年6月30日 植栽
 園芸種として販売されているフイリゲンジスミレ(日本には自生しない)は葉がとても美しく、花後でも観賞価値があると思います。栽培に挑戦して、うまく冬越しができないことが多かったのが残念。
 ゲンジスミレは個体数が少ないと聞きます。未だ、自然の中で見掛けたことはありません(注:その後、出逢うことができました)。でも、展示会で栽培の上手な方たちが手塩に掛けた鉢を見るのも好きです。タネから育てる場合、植え替えを嫌うため、はじめから鉢に蒔くことになるらしいですね。
 ゲンジスミレの「ゲンジ」は「源氏」に由来しますが、源平の源氏ではなく、紫式部の源氏物語の方なのです。葉の裏面の紫色から紫式部、そして源氏物語に繋がる・・・、これは恐れ入った話です。
2001/04/01

 上記の「その他」でも記載している通り、イヨスミレがゲンジスミレに統一された経緯があります。しかしながら、愛媛産の個体は生育に関する性質が異なることが分かっているそうです。愛媛産は早咲きで育てやすいけれども、閉鎖花HELP!に変わるタイミングが早くて、結果として花期が短いのだそうです。一方、関東甲信越で見られる個体は病弱で、栽培が難しいという難点があります。では、これを交配したら…、というテストを行った方がいらっしゃって、結果は双方の良いところを反映する成果になったとか。でも、交配できたということは同じ種ということでしょうが、交配?結果には興味津々ですね。
2007/11/15

 『群馬県植物誌』、『埼玉県植物誌』の記載にしたがって、群馬県、埼玉県に「書籍情報」をマークします。
2010/01/10


イヨゲンジスミレ

 イヨスミレとゲンジスミレを交配した話の後日談ですが、浜島糸子氏が1986年に交配したとの記録がありました。「(仮称)イヨゲンジスミレ」と呼ばれ、性質として、発芽率が良く、ソウカ病にも強いことから、栽培に適していると評価されたそうです。交配して普通に稔性がありながら、両者は少しだけ性質が異なります。その子孫は優秀でした。雑種強勢には当たらない訳ですが、ハーフが優れた特質を現わしやすいという現象だとすれば、つまり、遺伝的に少しだけ違いがあると見るべきなのでしょうね。 2019/09/02


 ふと、気が付いたのですが、ゲンジスミレとイヨスミレは、同じ年に同じ雑誌で発表されていますね [B. M. T. 16: (1902)]。記載頁が違うだけです。感覚的に「イヨスミレの発表が遅かったのだろう」と思い込んでいました。では、イヨスミレの方が synonym とされた理由は何なのでしょうか。理論的には逆でもよかった訳ですよね。原記載を読むと、標本の採集はイヨスミレの方が早いのです(関係ないか)。
2020/04/24

 伊予・風早のサイトによると、イヨスミレはゲンジスミレの近縁種とされていたが、「平成27年に近在の農家と伊予花の会の協力で、イヨスミレと各地で採取されたゲンジスミレの標本を山形大学の研究者に提供し、イヨスミレとゲンジスミレのDNAを調べてもらったところ、朝鮮半島由来のゲンジスミレまで含め、全く同じDNAを持っていることががわかった」と記載されている。
2022/12/31


(つぶやきの棚)徒然草

 (1999/06/20) Latest Update 2023/09/18 [910KB]

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