モモバナノジスミレという表現がありました。例えば、サクラタチツボスミレについては、ちょっとした色の違いだろうと思っていたのですが、実際に隣合って咲いている状況を見て「あー、こんなこともあるんだ」と実感したことがあります。ただ、元々ノジスミレには多彩な色合いがありますよね。その多彩な色合いの一つと感じます。
ニオイノジスミレについて「信州のスミレ(今井建樹、伊藤昭介著)」に説明があります。『匂いが非常に強く、全体が小型。白濁した緑色の葉表面に短毛が密生、暗紫色の裏面は無毛。根が肥大化する。』とのこと。展示品の特徴とその説明は一致していますね。この個体を嗅いでみましたところ、強いとは思いませんでしたが、甘めの香りがしました。
芳香の強弱を含めて、この程度の差異では品種に区分することの是非は議論の余地あるでしょう。ただ、見た目だけではなく、性質が異なるのであれば分けるのが必然だろうという感想を持ちます。このケースが該当するか否かは分かりません。2013/01/11
生育場所や全体のイメージがマンジュリカに似ていながら、開花時期が少し早く、花の感じが明らかに違うので見間違うことは少ないと思います。文献によると、果実の形状が尖っていて、マンジュリカのように褐色の斑点ができないので、その時期にも区別ができるのだそうです。市街地の陽当たりの良い路傍等に咲いています。
シロノジスミレは東京都で見出された純白種(白花変種)で、芳香が強いものです。園芸店で比較的良く見掛けます。1999/06/20
陽だまりが大好きなノジスミレですが、障害物がなく、日光を独占できる石段の壁に小さな隙間を見つけて、数段に渡って咲いていました。こんな場所にタネが引っかかる可能性は、どの程度なのでしょうか。2003/03/25
素年前、ノジスミレとコスミレ、ヒメスミレ、それからスミレが同居している場所を見つけたのですが、困ったことに、その違いが微妙で見れば見るほど分からなくなってきました。高尾山近辺で見た個体は「ノジスミレです!」と主張しているような風貌だったのですが、最近見つける個体はとても面倒くさいのです(笑)。2006/05/20
南国薩摩で出逢ったノジスミレは花茎が長めで、葉が立ちあがるスマートな個体でした。余り、キリリとしないというのがトレードマークなのにどうしたことでしょうか。それから、地元の方も悩む「スミレやコスミレと区別が難しい個体」も多く目にしました。多くの自生地を見ることは大事ですが、見れば見るほどに混乱しなければ良いなぁと思います。2008/03/25
植物体や花弁の毛の有無(または多寡)で品種とすることが多いのですが、顕著な特徴とみなされる場合を除いて、余り推奨できる話だと思っていません。ノジスミレの場合は、同定の一助になる側弁基部の毛について判断材料とされたものかも知れません。いづれにしても、「品種」というより、「型」という区分があるとでも理解した方が妥当でしょう。2010/11/26
改めて、中国(台湾を含む)の資料やwebサイトを見ると、おそらく、ほとんどの方は混乱すると思います。紫花地丁、光瓣菫菜、菲律賓菫菜、短毛菫菜等々、たくさんの名前が出てくるだけでなく、学名や写真を見ても「あれ」と「これ」と「それ」がいっしょに扱われている、そんな感覚に陥ってしまうのです。ノジスミレとヒメスミレとコスミレ、それからスミレもほぼ同じものであるかのようであり、学名にしても、シノニムを含めて10種類程度が併記されていたりします。
想像ですが、とにかく個体数が莫大な数に上るのだろうと思います。それぞれに変化があり、交雑種もあって、まとめることができないのかも知れません。共通するのは、主に中国で薬用植物(薬草)として広く知られていることです。その資料にはフラボノイドとして 'violayedoenamide' 、効能として 'anti-HIV-1' という単語が出てきます。侮れませんね(笑)。2011/09/10
Viola yedoensis は江戸、つまり、「東京のすみれ」という意味になりますが、一方、Viola philippica ならば「フィリピンのすみれ」でしょうね。更に Viola chinensis は中国もしくは台湾…。これは、混乱そのものですが、ただ、こういう状況は珍しくはないそうです。
調べてみると、V. yedoensis は V. philippica の synonym とする記述が多いのですが、更に詳細に調べてみると、V. yedoensis f. candida Kitag. ,1934 が synonym であるとされています。ふ~む、複雑ですね。つまり、ノジスミレの品種として発表されたものが synonym だった訳で、ノジスミレ自体のことではなかった訳ですね。ただ、写真や標本を拝見しますと、極めて似ています。分けなくても良いのでは!という結論になってしまったら、発表の時期から、V. philippicaが accepted として扱われる理屈でしょう。
複数の国の学者が調査して発表する訳ですから、こんなことは「想定内」ではないでしょうか。乾燥標本に加えて、DNAの塩基配列データを添付して発表する方式にしないといけないのでは!2020/04/22
(1999/06/20) Latest Update 2024/08/06 [1.08MB]