フチゲオオバキスミレ [オオバキスミレの変種] (縁毛大葉黄菫) [別名:キタカミキスミレ]
フチゲオオバキスミレ
北海道室蘭市 2010年5月11日 alt.=100m

フチゲオオバキスミレ
岩手県釜石市 2006年5月6日 alt.=160m
フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
岩手県釜石市 2006年5月6日 alt.=160m
分類 キスミレ類
学名 基本種 オオバキスミレ Viola brevistipulata (Franch. et Savat.) W. Becker Published in: Beih. Bot. Centralbl., Abt. 2, 34:265 (1916)
変種 フチゲオオバキスミレ Viola brevistipulata subsp. brevistipulata var. ciliata (H.Boissieu) W.Becker Published in: Ann. Rep. Fac. Lib. Art. Coll. Iwate 1:79 (1950)
品種 シロバナフチゲオオバキスミレ Viola brevistipulata subsp. brevistipulata var. ciliata f. albescens
異名 フチゲオオバキスミレ Viola brevistipulata var. ciliata (M. Kikuchi) F.Maek.
由来 brevistipulata : 短い托葉がある、ciliata : 細い毛の多い、まつ毛のある
外語一般名
茎の形態 有茎種
生育環境 海岸近辺の山中で見られる。太陽が当たる南西斜面で見られた。
分布 国内 北海道、東北の海岸に分布する。福島県南相馬市の観察報告があり、これが、現状の南限と見られる。
海外
補足
花の特徴 形状 中輪、ただし、全体の大きさに比べて小さめに見える。側弁の基部に毛がある。
山吹色と呼んだ方が良いような濃い黄色。唇弁に赤紫色の条が入る。
小さくて目立たない。
花期 普通。
花柱 カマキリの頭形(虫頭形)(突起毛が見られる)。
芳香
補足 全体に比較して花は小さい。特に唇弁が小さい。
葉の特徴 形状 先が尖り、全体には丸みがある心形または卵形。脈に沿った凹みが見られる。
変異があるが、光沢のある緑色。
補足 葉の縁、裏の葉脈HELP!に微毛がある。托葉は三角形で全縁。葉質が厚めとされる。
種の特徴 形状
補足
根の特徴
絶滅危惧情報 福島県:絶滅危惧Ⅰ類
基準標本 不詳:陸前高田(1933)、陸中宮古(1949)、宮城県金華山島(?)
染色体数 2n=12
参考情報
その他 母種と異なり、余り群生しない。根元には葉がなく、竹馬に乗っているイメージ。
菊地政雄WHO!氏が『岩手県のスミレ(岩手大学学芸学部研究年報、1950)』で、「葉縁に細毛があり、茎や葉柄、花梗の上部に極めて細かい毛(粉状毛)のあること~」と述べ、新称として発表している。
"Flora of Japan, Vol. IIc"では母種にまとめられたとされる。ただ、関係者以外で、この見解を支持する主要な文献や意見は見当たらず、当該資料の取扱いは極めて難しい。分子系統学的アプローチでも母種との差が大きく、否定的である。

フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
青森県むつ市 2008年5月9日 alt.=120m

フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
フチゲオオバキスミレ フチゲオオバキスミレ
北海道室蘭市 2010年5月11日 alt.=100m

 典型的なオオバキスミレとの違いは、根は縦に伸び、根茎で増える性質が弱いため、大きな群落を作らないとのこと。これが遠目で見る違いとして最も目立つポイントである。近づいて見ると、海岸性のすみれたちに共通する特徴である葉の光沢と厚みが目に留まる。同時に、赤くて強く立ち上がる形態にもオオバキスミレとの違いを感じるだろう。
2006/05/08

 もっともっと良く見てみると、花が開く前の蕾がとても臙脂(えんじ=黒みを帯びた濃い紅色)色であることに気付く。オオバキスミレも赤い場合があるが、ここまで強い色ではない。開花した花弁の裏面にも赤味がより強めに見える。さて、問題の「微毛」だが、ちょっと見には分からないほど細かい毛で、マクロレンズで寄りに寄ってみて、確かに微毛が生えているなぁと感じる程度のものだった。
(注)35mm換算で140mm程度になるマクロレンズを使用して、更にファインダー部で2倍に拡大して観察した。
2006/05/08

 青森県で再会した。だが、現地では大きめのルーペで見ても、白い微毛がポツポツとあるのがなんとか分かった程度で、特徴といえる程の毛を確認できなかった。納得がいかず、数枚の葉も持ち帰って正解。自宅で腰を据え、照明を当ててジックリと観察したところ、葉の縁に岩手産よりも更に細かい毛の存在を確認した。敢えて言えば、確かに他の種では見られないのかも知れないが、余りに微細すぎる特徴である。
2006/05/08

 これまでにも述べたように、葉の縁に毛があるから「フチゲ」という言葉を冠したこと自体に疑問を感じる。五十嵐博氏が北方山草20(2003)で述べている説明が極めて分かりやすいので、以下、引用しておくことにする。
「~フチゲオオバキスミレの名前もふさわしくない。道北のオオバキスミレは葉縁に毛がある。フチゲオオバキスミレの形態は単生し、蕾時に花弁裏が赤茶色になることが特徴で太平洋側分布型である。」----至極的を得た表現である。
2018/09/03


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 (2006/05/08) Latest Update 2022/07/04 [630KB]

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