ソメイヨシノ[桜]
(染井吉野、バラ科)---
Cerasus x yedoensis
'Somei-yoshino' ---
現在の日本を代表する桜、ソメイヨシノです。エドヒガン(系)とオオシマザクラの人工交配種とされています(自然交雑種である可能性も否定できない)。いずれにしても、江戸時代の江戸染井村(現在の東京都豊島区駒込地区)の造園師や植木職人達によって育成され、拡められていったものです。
ソメイヨシノは全て同じDNAを持つクローンであり、自家不和合性が強いために種子ができません。そこで接木による栄養繁殖などで増殖されています。桜前線または開花宣言などの際に観察されているのは(原則として)ソメイヨシノです。
撮影 : 千葉県八千代市 2009年3月30日
科 |
バラ科 |
属 |
サクラ属 |
分類体系 |
APG |
属性(生活型) |
落葉高木 |
標準和名 |
ソメイヨシノ |
漢字表記 |
染井吉野 |
学名/栽培品種名 |
Cerasus x yedoensis 'Somei-yoshino' |
RDB |
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花期 |
春:3~4月 |
結実期 |
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原産地 |
日本 |
備考 |
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国内分布 |
ほぼ全国で栽培され、海外でも多く植林されている。 |
自生環境 |
沖縄などを除く、ほぼ全国で栽培されている。 |
補 足 |
江戸時代に、エドヒガン系の桜とオオシマザクラを交配して作出されたとする説が有力だが、他に諸説がある。(情報追加)2007年、エドヒガンザクラ(母種)とオオシマザクラ(父種)が確定として提唱されたが、その後、父種はオオシマザクラとヤマザクラの交雑種とする説(DNAのSSRという部分の比較による説)が提唱されている。 |
千葉県八千代市 2009年3月30日
寿命は比較的短い方とのことですが、それなりの巨木になります
千葉県船橋市 2009年3月28日
桜は自家不和合性が強く、同じ樹木の雄蕊と雌蕊では果実が生りにくいはず…。
ソメイヨシノはクローン、つまり、同じ遺伝子を持っています。
では、この果実は何でしょうか?!
別種の花粉が供給されたか、ソメイヨシノと勘違いしているか、どちらかでしょうね(笑)。
2016年4月15日 (千葉県船橋市) 2016年4月29日
ソメイヨシノはほぼ種子ができない、それは結果として事実ですが、これは前述の「自家不和合性」によるもので、子孫を残す能力が失われているという訳ではないのでしょう。なにしろ、ソメイヨシノは全てクローンですから、たくさん林立していようとも同じDNAなので「自家不和合性」が発動してしまいます。別種とのハイブリッドなら種子はできることになりますが、それは、その段階でソメイヨシノではないことになります。
一斉に花を咲かせている時期、樹木全体が薄紅色になって綺麗です
千葉県八千代市 2009年4月5日
ソメイヨシノの研究が進み、交雑親はエドヒガン(母種)とオオシマザクラ(父種)と確定した(2007年)のだそうです。
ただし、確定という「説」である可能性もあり、SSRを比較する手法に依ると、交雑親はエドヒガンザクラ(母種)とオオシマザクラとヤマザクラの交雑種(父種)とする認識が、最も新しいDNA解析による説です。
さて、ここで問題となっているのが、韓国の済州島に産する王桜とソメイヨシノの混同です。例えば、「王桜のソメイヨシノ起源説」、「アメリカのポトマック河畔(ワシントンD.C.)にある桜並木のサクラは韓国産」とする誤解が、あたかも本当のこととして流布されていたりします。オオシマザクラは日本固有種ですから、その交雑種が済州島に『自生』していることは、科学的にあり得ないことなのですが、そのように信じられているのだそうです。
王桜とソメイヨシノは既にDNA分析の結果、別種であると分かっている(2007年、2011年)のに、現在でも、韓国では余り状況が変わっていないとのこと。不思議な現象ですね。
もう一歩補足すると、京都大学グループの研究(1996年)で「交雑親の母親がエドヒガンであること」が確定したのですが、葉緑体にあるDNAに「母方からのみ遺伝する」という特徴があることを利用して、ソメイヨシノとエドヒガンの葉緑体DNAは一致することを確認したものです。
森林総合研究所グループの研究(2014年)ソメイヨシノのDNA分析を行い、DNAの塩基配列に存在する「配列の特徴的な繰り返し」からDNAの由来に注目をした研究により、エドヒガン47%、オオシマザクラ37%、ヤマザクラ11%、その他5%という交雑割合になっていると発表されました。考え方として、ソメイヨシノの母方はエドヒガン、もう父方はオオシマザクラとヤマザクラが交雑種という推測が成り立つことになります。
因みに、韓国の王桜(エイシュウザクラ)はエドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種(C. x nudiflora)であることも発表され、研究成果は2016年12月22日にTaxon誌でオンライン公開されたそうです。
【参考プレスリリース】
‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立(PDF:328KB)