ニョイスミレ (如意菫) [別名:ツボスミレ、コマノツメ、アリマスミレ]
ニョイスミレ
ニョイスミレ 新潟県上越市 2013年5月10日 alt.=310m
ニョイスミレ ニョイスミレ
ミヤマツボスミレ ミヤマツボスミレ
ミヤマツボスミレ 長野県松本市 2004年5月29日
ミヤマツボスミレ ミヤマツボスミレ
ムラサキコマノツメ シラユキスミレ
ヒメアギスミレ ヒメアギスミレ
ヒメアギスミレ 神奈川県 2006年3月24日 植栽
ニョイスミレ(黄白掃込斑) ニョイスミレ(白い覆輪)
分類 ニョイスミレ類
学名 基本種 ニョイスミレ Viola verecunda A. Gray Published In: Mem. Amer. Acad. Arts, n.s. 6(2): 382 (1858) 【注:論文掲載誌】
変種
アギスミレ Viola verecunda var. semilunaris Maxim.
ヒメアギスミレ Viola verecunda var. subaequiloba (Fr. et Sav.) F.Maek.
ミヤマツボスミレ Viola verecunda var. fibrillosa (W.Becker) Ohwi
コケスミレ Viola verecunda var. yakusimana (Nakai) Ohwi
品種
シラユキスミレ Viola verecunda f. candidissima M.Mizush. ex E.Hama et Nackej. Published In: Wild Violets Jap. Col.: 130, t. 43; 17-19 (1975)
ムラサキコマノツメ Viola verecunda f. violascens Hiyama ex F.Maek.
ハイツボスミレ Viola verecunda f. radicans Makino
異名
Viola alata Burgersdijk
Viola amurica W. Becker
Viola arcuata Blume f. radicans (Makino) Nakai
Viola carlesii Nakai
Viola hamiltoniana D. Don
Viola arcuata var. verecunda (A. Gray) Nakai Published In: Bot. Mag. Tokyo (1922)
その他、多数の異名が認められる
由来 verecunda : 内気な、(適度の)、semilunaris : 半月状の
外語一般名 【中】如意草(rúyìcǎo)、【韓】콩제비꽃
茎の形態 有茎種
生育環境 平地から高地、田の畦道から高原の林の中まで湿り気のある場所に自生する。
分布 国内 南西諸島を除いて、ほぼ日本全国で見られる。
海外 東南アジア広域(朝鮮半島、中国、台湾、ベトナム、タイ、ラオス、マレーシア)、モンゴル、ロシア、インド
補足
花の特徴 形状 小輪。側弁の基部には短毛が密生する。
淡い紫から白色。側弁と唇弁に赤紫色の条が細く入る。
半球形。短く白色。
花期 遅咲き。
花柱 虫頭形。
芳香
補足 花茎には毛がない。
葉の特徴 形状 全体は心形から腎形、基部は心形。変種には円形が多い。
両面とも濃い緑色。表裏で差が少ない。
補足 少し光沢がある。ミヤマツボスミレには微毛が見られる。托葉は全縁、時に不規則な切れ込みが見られる。
種の特徴 形状 極く小粒。涙滴形(膨らんだ楕円形)。
茶褐色から黒色。
補足 開花数も多く、個体当たりの収穫数は極めて多い。蒴果が細長い。
根の特徴
絶滅危惧情報
基準標本
ニョイスミレ : Hakadadi (函館) 1853 as "Viola arcuata"
ミヤマツボスミレ : 信濃
アギスミレ : 本州中部
ハイツボスミレ : 東京 巣鴨
染色体数 2n=24 (Nishikawa, T. 1985. Chromosome counts of flowering plants of Hokkaido.)
参考情報
その他
ムラサキコマノツメ 花が淡い紅紫色 スミレと呼ばないスミレ
シラユキスミレ 花弁の中心に紫条がなく純白
アギスミレ 葉が半月の形をしている 花期には判断が難しい
植物学者の牧野富太郎博士WHO!がニョイスミレという和名を提唱したことが知られる。ミゾスミレという別名が散見される。

ニョイスミレの学名について

 東南アジア広域に分布するニョイスミレは、個体数や種内変異が極めて多いという特徴を持っています。シノニム(異名)も多いことから、学名について数多の変遷があったであろうことが容易に想像できます。

 ニョイスミレの学名について、当サイトが参考にさせていただいているソースの一つ「YList:BG Plants 和名-学名インデックス(米倉浩司・梶田忠)」では、Viola verecunda A. Gray と記載されていますが、注釈(ノート)として『Y.S.Chen et al., Fl. China 13: 78 (2007)はタイワンツボスミレの異名とする』とあります。欧米や東南アジアの資料を当たると、Viola arcuata Blume を正名( accepted name, collect name )と記載して、Viola verecunda をシノニムとするケースの方が主流です。

 当サイトでは、当面、Viola verecunda を正名として扱いますが、変更する可能性があると認識しています。



ニョイスミレ
ニョイスミレ 静岡県富士宮市 2008年4月30日
ニョイスミレ
ニョイスミレ 愛知県 2008年4月5日 植栽
ニョイスミレ
ニョイスミレ 長野県塩尻市 2004年5月28日
ニョイスミレ ニョイスミレ

高校時代、広いグラウンドはとても乾燥していて、強い日差しの下、マンジュリカが力強く咲いていました。久しぶりに訪れた母校には、いくら探してもマンジュリカは見当たらず、替わりに、なぜか湿地に多いニョイスミレが一面に咲いていたのです。余りにも違う環境を好むスミレが咲いていたものです。当時はニョイスミレを見掛けなかったのですが・・・。
 ニョイスミレは「如意菫」と書きます。『如意』は仏教用語なのだとか!要するに、西遊記の孫悟空の秘密兵器である筋斗雲と如意棒の「にょい」で、「自由(になる)」という意味だと思われます。
<注釈> 僧が読経・説法の時に持つ僧具の一つ(左の画像参照)。

 孫の手に似た形状で、ニョイスミレの伸びた茎に雰囲気が似ている(杖状の仏具とする意見あり)。

 山菜として食べるとおいしいとのことですが、試してみようとは思えません(笑)。非常に良く増えて、地面を埋めるように一面に小さな葉を広げます。別名ツボスミレと呼ばれますが、タチツボスミレとは直接関係がないので、誤解を避ける意味でもニョイスミレという名称の方が一般化しつつあるようです。ちなみに「坪」とは「庭」の意味で、「どこにでもある」という意味合いになるとのこと。
ニョイスミレ  庭で大量に増えたニョイスミレは岩手産で、葉の形態からアギスミレに近いと考えています。ただ、同じ時期に全ての葉が半月形ではないので、何をもってアギスミレと断定して良いかわかりません。書籍によると「葉の形がニョイスミレとの中間形を示して区別がつかないものがあり、母種と連続的なものであることをうかがわせる」と記載されています。

 小さな黒っぽいタネが大量にでき、所かまわず増えていきます。庭で育てていると、ものすごい繁殖力で、全く雑草化してしまうところがスゴイ。でも、とても好きな部類のすみれです。
1999/07/24



 ニョイスミレと品種のムラサキコマノツメは、同じ場所に同居していることが多いようです。栽培が容易で、こぼれたタネでよく増えてくれます。品種との境界線は何だろうと思うのですが、観察する限り、花弁が白いか紅色に染まっているかで判断されているように思います。実際、他の違いを見い出すことはできません。
 ただ、中途半端だなと思うのは、変種であるアギスミレやミヤマツボスミレにも同じような花色の変異が見られるので、その場合はどのような命名をするつもりなのかな、という点ですね。
 ニョイスミレの変種ミヤマツボスミレについて、実は「これは典型品だな」と実感できる個体にまだ出逢っていません。葉の丸さが少し足りないとか、茎が立ち上がり気味だとか、もう少し花茎がひょろっとしていたら良いのに・・・とか、どこか中途半端なものが多いのです。
 おさらいですが、ミヤマツボスミレは標高が高い雪田植生(雪が溜まる草本植生)に生育して、茎は伸び上がらず、低く倒伏するとともに、匍匐して根を出すことによって増殖する性質だそうです。
2007/06/28

 ニョイスミレの分布について、「屋久島以北」とする資料がほとんどです。屋久島は鹿児島県ですから、それ以北というと沖縄県には分布していないと言うことになりますね。しかしながら、一部の資料には沖縄県にも分布していると記載されています。
 ニョイスミレは朝鮮半島や中国等の東アジアに分布しますので、沖縄県に自生しないというのは、地理的にも気象的にもむしろ妙な感じがしています。敢えて避けて分布するのなら面白いですね。ただ、これまで訪問した限り、自分の目では確認できていません。「一般情報」として記載して、確認をしていきたいと思います。
2008/01/27

 ツボスミレという和名で呼ばれることがありますが、牧野富太郎先生WHO!が「タチツボスミレこそ、真のツボスミレである」と言及したこともあり、橋本保先生WHO!がニョイスミレ(如意菫)という呼称を薦めた資料を読みました。それは中国名の「如意草」に由来するという情報が補足されていました。一方、中国のデータベースによると、「如意草」は Viola hamiltoniana D. Don と説明されていて困ってしまいました。
 アジアのみならず、同じ種が別の名前で認識されていることは多いのですが、Viola hamiltoniana の場合はどうなのでしょう。書籍では限界がありましたので、ネット上のデータベースで探し始めました。先ず、この学名ですが、見つかっても"UNCHECKED"とされている場合が多く、詳しい説明が見当たりません。「如意草」という名の植物も複数存在するようで、迷路に迷い込んだかと思ったところで、記憶のある黒いタネの写真を発見しました。別名を「匍菫菜」というようです。そして、ついに見つけた「匍菫菜」は確かにニョイスミレのようでした。
 ただ、同時に見つかった「如意草」にはViola arcuata Bl. という学名が付されています。手持ちの資料では見当たらないのですが、ニョイスミレがViola arcuata var. verecunda とされていたことがあるようです。つまり、synonym ということになります。Viola alataViola distansViola serpens var. hamiltoniana、他にも多彩な synonym が見つかりました。これはウンザリです。
2008/01/27


ミヤマツボスミレ ミヤマツボスミレ
ミヤマツボスミレ
ミヤマツボスミレ 神奈川県 2013年3月20日 植栽

(つぶやきの棚)徒然草

 (1999/07/24) Latest Update 2023/06/13 [700KB]

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