茨城のすみれ
 茨城県は、スミレという視点で見ますと、なかなかおもしろい土地だと感じています。マキノスミレが産する山がたくさんあり、東北地方の入口であると感じさせます。ただ、ナガハシスミレが登場する点は、さすがに不思議です。
 マキノスミレは実際に確認できましたが、ナガハシスミレを見つけられません。新潟県や岩手県などの個体と少し違うのではないかと勝手な想像をしています。尚、茨城県植物誌にはオクタマスミレ、カワギシスミレ、ヤミゾスミレが記載されています。このうち、ヤミゾスミレについて「八溝山はタイプロカリティーである」と補足されていましたが、葉の長いフイリフモトスミレであるとする報告が上がっています。
(2009/08/16)

 さて、前述のヤミゾスミレですが、茨城県レッドデータリストから削除されました。
(2012/08/07)



コミヤマスミレ オカスミレ ナガバノタチツボスミレ ヒメスミレ
種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ C) D)
オカスミレ A) C) D)
シロバナオカスミレ D) 白花変種
アケボノスミレ A) C) D)
アリアケスミレ A) B) D) 危急種、稀
エイザンスミレ A) C) D)
シロバナエゾスミレ D) 白花変種
コスミレ A) D)
コミヤマスミレ A) C) D)
サクラスミレ A) B) C) D)
(シハイスミレ)マキノスミレ A) C) D)
シロバナマキノスミレ D) 白花変種
スミレ A) C) D)
ナガバノスミレサイシン A) D)
シロバナナガバノスミレサイシン D) 白花変種
ノジスミレ A) D)
ヒカゲスミレ A) C) D)
タカオスミレ D)
ヒメスミレ A) B) C) D) *危急種解除
フジスミレヒナスミレ A) C) D)
フイリヒナスミレ D)
ヒメミヤマスミレ A) B) D)
フモトスミレ A) C) D)
フイリフモトスミレ D)
マルバスミレ A) C) D) (A、D:ケマルバスミレと記載)
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A) C) D)
エゾアオイスミレ D)
タチスミレ A) B) D) 絶滅危惧種II類
タチツボスミレ A) C) D) A:ケタチツボスミレ
オトメスミレ D)
シロバナタチツボスミレ A) C) D) 白花変種
ナガハシスミレ A) B) D)
ナガバノタチツボスミレ 植物地理・分類研究・新産地報告(2018、吉田政敬、他)
ニオイタチツボスミレ A) C) D) A,D:ケナシニオイタチツボスミレ
ニョイスミレ A) C) D) (A:ツボスミレと記載)
アギスミレ A) C) D)
ムラサキコマノツメ C) D)
種(自然交雑) 参考資料 補足
オクタマスミレ A) D) エイザンスミレ x ヒナスミレ
カワギシスミレ A) D) エイザンスミレ x マキノスミレ
ヤミゾスミレ A) D) サクラスミレ x フモトスミレ、稀
種(自然交雑 無名) 参考資料 補足

書籍上、表現が不確かな種に関しては除外し、変種や品種については主要なもののみを選びました

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 茨城県植物誌 鈴木昌友、他、個人名7名 茨城県植物誌刊行会 1981年9月25日
B) 茨城における絶滅のおそれのある野生生物(植物編)
(茨城県版レッドデータブック植物編)
茨城県(見直し検討委員会) 茨城県 2000年3月
C) 茨城県自然博物館 第3次総合調査報告書
茨城県北東部地域の維管束植物
茨城維管束植物調査会 茨城県自然博物館 2004年3月31日
D) 茨城県産のスミレ属植物 鈴木昌友、森口茂子 茨城大学教育学部 1978年

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 水戸市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


(つぶやきの棚)徒然草

 (2009/08/16) Latest Update 2023/08/24 [80KB]

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