秋田のすみれ
 秋田県については、とてもとても古い資料をベースにスタートしましたので、予め、お知らせしておきます。なにしろ、昭和7年と言いますから、西暦では1932年、昭和一桁と呼ばれる方々が生まれた時期の書籍です。当然ですが、現代とは認識が異なるものもありましょう。少し注釈を付けましたが、注意が必要かも知れません。ナガバノスミレサイシンの記載があり、少し戸惑っています。
 参考にさせていただいた「秋田縣植物誌」は秋田縣師範學校の教諭であった松村七郎氏がまとめたものですが、校長の和田喜八郎氏がその苦労を讃えるととも、県植物誌で完成していたのは全国でもまだ10を数える程度で、東北では岩手のみであったことから「愉快に堪えざる所にして」と表現しています。その完成が嬉しかったのでしょうね。
(2009/08/16)

 やっと比較的に新しい時代の資料を入手しました。ただし、1972年の発行です。それでも、多くの情報を追加できたと思います。
 少し困っているのは、A) B) ともにシハイスミレが記載されていることです。実は、山形県でシハイスミレの自生を確認しましたので、その意味では誤認ではないのかも知れません。
(2012/12/02)



オオバキスミレ キバナノコマノツメ タカネスミレ
種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ A) B)
オカスミレ B) 無毛品種
アケボノスミレ 県RDB2014に記載(県絶滅危惧EN指定)
アリアケスミレ B) 県RDB2014で削除された
ウスバスミレ A) B) (県絶滅危惧VU指定)
エイザンスミレ B)
コスミレ A) B) (県絶滅危惧EN指定)
ゲンジスミレ 県RDB2014に記載(県絶滅危惧CR指定)
サクラスミレ 県RDB2014に記載(県絶滅危惧CR指定)
シハイスミレ A) B) マキノスミレの誤認か?、県RDB2014で削除された
マキノスミレ B)
シロスミレ B) (B:シロバナスミレと記載)
スミレ A) B) A:スミレの変種としてシロバナスミレを別途記載 *1
スミレサイシン A) B)
シロバナスミレサイシン B) 白花変種
ナガバノスミレサイシン A) *疑問あり
ナンザンスミレヒゴスミレ B) 自生北限と言われる、(県絶滅危惧EN指定)
ノジスミレ
ヒカゲスミレ B)
ヒメスミレ B) 県RDB2014で削除された
フジスミレヒナスミレ B) (県絶滅危惧NT指定)
フモトスミレ A)
マルバスミレ B) (B:ケマルバスミレと記載)
ミヤマスミレ A) B)
フイリミヤマスミレ B)
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A) B) (A:アフイスミレ、ヒナブキと記載) *2
イソスミレ B) (B:セナミスミレと記載)(県絶滅危惧EN指定)
イブキスミレ B)
エゾアオイスミレ A) B) (マルバケスミレと記載)(県絶滅危惧EN指定)
エゾノタチツボスミレ B) (県絶滅危惧CR指定)
オオタチツボスミレ A) B)
オオバキスミレ A) B)
ナエバキスミレ B)
キバナノコマノツメ A) B)
タカネスミレ A) B) (県絶滅危惧CR指定)
タチツボスミレ A) B) ケタチツボスミレを別途記載
ツルタチツボスミレ B) (県絶滅危惧EN指定)、B:テリハタチツボスミレの変種扱い
テリハタチツボスミレ A) B) A:一覧表には記載なし(標本の写真のみ掲載)
ナガハシスミレ A) B) (A:ナガバシスミレと記載)
ニオイタチツボスミレ A) B) (A:ニホヒタチツボスミレと記載)
ニョイスミレ A) B) (ツボスミレと記載)
アギスミレ A) B)
ミヤマツボスミレ B)
種(自然交雑) 自生確認 補足
種(自然交雑 無名) 参考資料 補足
*1 A:シロバナスミレ:学名 Viola mandsurica var. albesens を使用。ただし、シロスミレを意味しているものと思われる。
*2 B:アフイスミレ:学名 Viola nipponica Maxim. と注釈。

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 秋田縣植物誌 松村七郎 秋田縣師範學校 1932年3月1日
B) 秋田県植物目録 望月睦夫(湯沢高等学校) 北陸の植物の会 1972年12月15日
(探) 秋田県植物分布図 藤原睦夫 秋田県 1997年
(参) 秋田県レッドデータブック2014(維管束植物) 秋田県生活環境部自然保護課 2014年3月

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 秋田市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/08/02) Latest Update 2023/08/23 [110KB]

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