和歌山のすみれ
 ずいぶん探して、やっと「紀州の植物誌」というとても古い資料を発掘しました。書籍そのものには発行年が記載されておらず、インターネットで探しますと、昭和7年という情報と昭和4年という情報が出てきました。ここでは後者を採用しています。それにしても、写真を多用しており、その写真が透けて見えるトレーシングペーパー(かな?)に説明が印刷されているという凝りようです。
 とにかく古い書籍なので、旧かな使いが多いこと、学名が古いことは当然として受け入れる必要がありましょう。それから、和歌山を代表するような自然交雑種であるカツラギスミレが、新種として記載されています。曰く、「小川由一氏が葛城山で見出し、中井博士*が新種と考定した」もので、芳香があるとの前提で記載しています。その後にヒゴスミレとシハイスミレの自然交雑種と判断されたのでしょうね。
(注)*中井猛之進博士WHO!
(2009/10/12)

 スミレ愛好会さんの『近畿地方のスミレ類』を入手して、時代も異なり、種の数が大幅に種が増えた感があります。
(2017/01/28)


種(無茎) 品種または変種 参考資料 補足
アカネスミレ A) B)
オカスミレ A) (A:ヲカスミレと記載)
アケボノスミレ B) ただし、Bには絶滅と記載
アリアケスミレ A) B) (A:ロバナスミレと記載)
シロバナオカスミレ A) (A:ロバナヲカスミレと記載)
エイザンスミレ A) B) (A:エゾスミレと記載)
コスミレ A) B)
コミヤマスミレ A) B)
サクラスミレ B)
シロスミレホソバシロスミレ A) B) (A:シロバナスミレと記載)
シコクスミレ B)
シハイスミレ A) B)
マキノスミレ B)
シロスミレホソバシロスミレ A) B) (A:シロバナスミレと記載)
スミレ A) B)
アツバスミレ B)
ホコバスミレ B)
トウカイスミレ B)
ナガバノスミレサイシン A) B)
ナンザンスミレヒゴスミレ A) B)
ノジスミレ A) B) (A:ノヂスミレと記載)
フジスミレヒナスミレ B)
ヒカゲスミレ A)
ヒメスミレ A) B)
ヒメミヤマスミレ B)
フモトスミレ A) B)
マルバスミレ A) B) (A:ケマルバスミレと記載)
ミヤマスミレ A)
種(有茎) 品種または変種 参考資料 補足
アオイスミレ A) B) (A:アフヒスミレと記載)
タチツボスミレ A) B)
タチツボスミレ(山陰型) B) (B:ニホンカイタチツボスミレと記載)
ケイリュウタチツボスミレ B)
ツヤスミレ B)
ナガバノタチツボスミレ A) B)
ニオイタチツボスミレ A) B) (A:ニホヒタチツボスミレと記載)
ニョイスミレ A) B) (A:ツボスミレと記載)
アギスミレ B) 過去に記録はあるが、現状不明
ハイツボスミレ A)
ヒメアギスミレ B) 過去に記録はあるが、現状不明
種(自然交雑) 参考資料 補足
カツラギスミレ B) ヒゴスミレ x シハイスミレ
コマガタケスミレ B) スミレ x フモトスミレ
スズキスミレ B) スミレ x ヒゴスミレ
タナオスミレ B) ヒゴスミレ x フモトスミレ
ヘイリンジスミレ B) ヒメスミレ x スミレ
ホウフスミレ B) スミレ x シハイスミレ
ホソバキリガミネスミレ B) スミレ x ホソバシロスミレ
マルバタチツボスミレ B) タチツボスミレ x ニオイタチツボスミレ
種(自然交雑 無名) 参考資料 補足

変種や品種については主要なもののみを選びました。

記号 参考資料 著者、編者 発行/出版 発行
A) 紀州植物誌 宇井縫蔵 高橋南益社、高橋冬吉 1929年
B) 近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-(増補改定) 牧 嘉裕・山本 義則 スミレ愛好会 2016年3月1日

気温グラフ 降水量グラフ
【参考:気象統計情報】 和歌山市の例 (総務省統計局資料を利用)

各地のすみれ 掲載種について

 「各地のすみれ」に掲載しております自生種などの情報は、ご覧いただければ一目瞭然ですが、収集した植物誌など、参考資料の記載内容を紹介しているものです。こうした参考資料は、一般に、県や市などの地方自治体や教育機関、地方の博物館や植物学会、研究団体(個人を含む)などが情報収集の上、編集したケースが多いと認識されます。

 それらの参考資料が編集された時期、目的や経緯、情報収集や編集をされた方々の属性はいろいろですので、一貫性は期待できません。また、ご承知の通り、植物分類学の世界でも学術的知見が変わり続けていますので、編纂時期によって種の名称や表現が変わっているのは、むしろ、当然と言えます。
 編集者の属性も千差万別であり、正直なところ「ちょっと怪しい」情報も、まぁまぁ存在しています。スミレ科に関する限り、このサイトに訪問されている方々の方が、よりディープな知識をお持ちである場合も多いことでしょう。

 「ちょっと怪しい」を超えて、「明らかに外来種である」とか、「これは歴史的に変更された事実がある」、もしくは「単純ミス」などというケースに対しては、それなりの注釈を付けています。
 こうした状況を踏まえて、ご意見や情報をいただくこともありますが、全く踏まえていただけず(笑)、『間違いが多いから直せ』といったアドバイスをいただくこともありました。しかしながら、これらの情報は、日本に植物分類学が定着を始めた頃から現在に至る、歴史的側面を含む「記載事実」ですから、皆様からの投稿で作り変えるといった性質もしくは対象ではありませんね。それは、明らかに編者各位にも歴史に対しても失礼な態度ではないでしょうか。
 現在、私たちが持っている知識は、こうした試行錯誤も含む歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。その知識でさえ、来年には変わってしまうかも知れません。悪しからず、ご了承いただくべき性質だと考えて、簡単な補足を施させていただくものです。ぜひ、ご理解下さい。


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 (2009/10/12) Latest Update 2023/08/22 [75KB]

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